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[コメント] きみに微笑む雨(2009/韓国=中国)

やさしき雨。成都というテーマを与えられて取ったが故に生まれた多国籍映画。男女のすれ違いを示す台詞もさすが見事。
SUM

杜甫の「春夜喜雨」の冒頭「好雨知時節」(やさしき雨は時を知り)から取った原題「好雨時節」。作中でも杜甫はさんざん出てくるのだが、杜甫の世界かというと、ぼちぼち映像にこそそういう美しさはあるものの、そんなに杜甫な映画でもなく、ホ・ジノの映画である。

多国籍感の漂う男女のすれ違いの妙はさすがホ・ジノという他ない。しかし、物語は直線的ラブストーリーである。男女の過去と、地震を描いているところでストーリーに深みを持たせた所でなかなか保っているし、ラストをいいところでフェードアウトする所もホ・ジノの堅実さであって、見事。

しかし、一番ネックになっているのが、音楽のイ・ジェジンの起用ではなかろうか。確かに彼の音楽は美しい。そして、今までの参加作品を見ても、音楽が作品を引き立てている。しかし、ホ・ジノの世界観を考えると、今までのパートナーだったチョ・ソンウと比べると、いささか物語りを美しく飾りすぎているのではないかと思われて仕方がない。たしかに、登場人物は音楽屋ではないが、ホ・ジノが見せてくれてきた音への敏感さという意味では、いささか楽しみを奪われてしまった感がある。ホ・ジノ映画のバランスを取るための選択なのか。

いや、音楽は一要素に過ぎない。本作はホ・ジノらしい良作には違いないが、路線を模索している方向に不安を感じなくはない。

でも、ホ・ジノに私はついていく。新作で刺激を受ける楽しみが確実に期待できる存在だから。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ひゅうちゃん[*] ペペロンチーノ[*]

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