パニックシーンは迫力があり、子どもが観たらトラウマになりそうな演出（「火さえ避ければ助かる・・！」と肩を寄せ合う家族を津波が飲み込むシーンなんてマジ怖い）。とにかく、「日本が沈没するとしたら」という発想とは、なんと魅力的なのだろうか。そこにもっともらしい科学考証を織り混ぜたりするから、それはもう恐ろしく仕上がっている。

しかし、天災に見舞われ逃げ惑う民間人の描写の一方で、会議室や研究機関（そこは安全地帯に見える）で論じ合うお偉方の面々や科学者たちの姿は危機から隔離されているように見えるし、その視点からの描写がメインだったことはやや不満。

私は、どちらかというと、死を目の前にしたときの、一握りのお上の反応では無く、１億人の普通の人たちのドラマが見たかったのだ。

国家消滅を目前にしたときに

死に直面したときに

「国民をどう生き延ばすのか」、ではなく、「我々自身はどう生きたいのか（もしくはどう死にたいのか）」。「日本沈没」などという発想は、その特殊性ゆえに、（リメイクではなく）二度と使うことはできないだろう。この「日本沈没」という限りなく魅力的な仮想命題を使って、人間の地べたを這うようなギラギラしたドラマを、もっともっと深く描いて欲しかった。（特に国家消滅というテーマは興味深い）

■大陸移動説、プレートテクトニクス理論についての解説部分は分かりやすかった。数ヶ月で日本がいきなり沈むことは無いとは思うが。