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[コメント] EUREKA(2000/日)

天才のなせる仕事(02/04/07)→
秦野さくら

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「出て来い、外の空気は持ちがいい」

刑事はバスの中に立てこもる犯人にむかって説得する。そして、あっさり外に出てきた犯人を、警察はいとも簡単に射殺し表面的にはバスジャック事件は解決。冒頭のシーンである。

物語は、この冒頭の事件を反芻・対比するように進んでいく。今度は、外に出て行くことを躊躇う「犯人」が、意味や方法を模索しながら、存分に時間をかけながら、ゆっくりゆっくり進行する。それはあたかも、画一的な裁きによる善悪判断の裏側にある、もうひとつの答え探しをするかの如くである。

それを見守る監督の温かい目線が、全編に渡って感じられるだけに、直樹を警察に連れて行くことで解決(実際は解決していないと伊沢は認識している訳だが、伊沢が彼を連れて行く場面を描写することで私たちに意識付けさせている)するのは腑に落ちない。最後の梢の解決場面もしかりである。物語のセオリーとして、解決は必要なのであろうが、監督がここまで(モノクロ・長編)こだわり、ワガママに作ったのであるから、もう少し「解決」にはこだわって欲しかった。

それにしても、この映画は凄い。語るカメラワークと複線・暗喩の数々。何度見ても新しい発見や解釈が得られそうである。久々に「天才」という言葉が似合いそうな人々の作品に出会った。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ジャイアント白田[*] Linus[*] ina ALPACA[*]

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