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[コメント] 光の雨(2001/日)

親の時代を知ることは自分を知ること。裕木奈江、恐い。「メイキング」仕立ての失敗→
秦野さくら

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







丁寧に、まじめに作成された映画だと思いました。連合赤軍事件、どう映画化されたのかと興味をもって観ました。 私なりに気づいた点をまとめます。

近い時代の事件の映画化ということもあり、映画作成において苦心されたことが良くわかります。事件を「映画メイキング」を通して描くことは面白い試みだと感じます。しかし、この映画についてはあまり良い効果が発揮されたとは言い難い気がします。理由として、

●折角映画に気持ちが入り込みかけた矢先に陳腐な(わざと狙っているとも思える陳腐さの)メイキングシーンが入ると、気持ちを一気にしらけさせてしまう。

●見せ場であるはずの「監督」の心情が伝わってこない。何故今まで自分の中の「事件」を意識してこなかったのか、そして何故、逃げたのか。独白シーンはありますがそれも陳腐、雪の中をおどけるシーンも陳腐、ゆえにテロップが流れた後の最後のシーンこそ取ってつけたような陳腐さ。

●出演者が「事件」についての感想もしくは、演じた後の感想を述べるシーンがありますが、そこは映画を見る側の私達が考えるべきところ。特に、「事件」について無関心な発言をする場面は、その後の成長の複線と言えども白ける。台詞で、役者の「意識の薄さ」はダイレクト過ぎるくらい伝わってきたが、それが現代の世情を代表した言葉とは取れない。

●(これも見せ場であるはずの)出演者が次第に事件について理解し役者に感情移入していく成長過程があまり伝わってこない。(心情変化とその理由が伝わってこないうちに、あれれ、なんだか皆頑張り始めてる?という感じ)

事件を、現在と対比して描くことは良かったと思うのです。というのも、その「事件」が近しい時代に起きたにも関わらず、私達の今の価値観からは理解し難い事件であるため、そのまま描くと「遠い日の思い出」となってしまう可能性があるからです。監督の「現代にも通ずる病」として描きたいという思いには賛同します。しかし、それなら「メイキング」という表現ではなく、もっと別の方法があった気がするのです。・・・私には、どうにも、高橋監督が、映画中の「監督」同様、「メイキング」という表現によって「逃げ」ているように感じてしまうのです。もっと、ずばり描いて欲しかった。

また、映画の中で、監督交代するシーン。実際に「事件」を体験した世代の監督から、若い監督への交代。折角いい設定だと思ったのに、なぜ二人の「映画」の撮り方が一緒なのでしょう?(出演者達が次第にいい演技をしてはいきますが、それだけ)。 事件の捉え方、映画の撮り方が二人は絶対に違うはずです、というか、違わないと、この設定にした意味が全然ないと思うのです。

それから、「あの時代より今のほうが悲惨な気がします」という裕木奈江の最後の台詞は・・・やはり、陳腐です。

偶然にも、高橋監督トークショーの日に映画を観て、監督の熱意とまじめなお話をお伺いしたため、私もまじめに考え、述べさせていただきました。

(評価:★3)

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