リメイク版を先に見ていたせいか、主人公の家庭の描写が荒っぽく感じられた。特に妹との関係の描き方などはかなり酷いと思う。リメイク版では「妹を自分のような人間にさせたくない」という思いやりがあるからこそ強く共感出来たのだけど、これじゃタダのシスコン変態野郎にしか見えず抱くのは反感ばかり。ラストにそんな兄貴と一緒に戦おうとする妹の行動も理解不能。母親ともケンカばかりという一面的描写で、ヤクザ者の複雑な苦悩を組み入れたリメイク版の方が痛切な空気が味わえた。

それに、ラストで主人公が急に警察官達の前にで命乞いのような行動を取る所なども説得力不足の展開に思えた。全体的に、演出は文句無しに素晴らしいのだけど、脚本におけるキャラクターの作り込みが甘いという印象。いかにもトーキー移行期らしい演技などにも一因あるのかも知れないが。

という事で、個人的にはリメイク『スカーフェイス』の方が好き。あちらは尺も随分長いし、脚本家・監督も癖のある二人なので、かなり好みの問題になって来るとは思うが。なんせ俺の場合は悪名高いオリバー・ストーンが好きという変人なので・・・。（笑