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[コメント] 見えない恐怖(1971/英)

あまり知られていないが、これはホラーファン必見。『見えない恐怖』(Blind Terror)とは全く上手くかけたもの。それはヒロインにとっても、我々にとっても。
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一家惨殺後の邸宅を盲目のヒロインが気付かずに歩き回る件の怖さと言ったら!イスの下にダラリと覗く足。なかなか映らない隣のベッド。庭に置き去られた芝刈り機。お湯を入れ始めた浴槽に死体。いざ入浴、という所に突然の来客という絶妙な外し。仕切り直しの入浴は閉じられたドアの向こう。

カメラに映らないからこそそこにいる(死体だから、「ある」が正しいだろうか?)という存在感が恐ろしいほど強調される。まだかまだかと焦らし、いよいよ来るぞというタイミングも鮮やか。あまりの見事な緊張感に死体が映される瞬間には思わず「あ〜、やっぱり」と予感的中の歓びか緊張からの安堵かに近い薄笑いを浮かべてしまった。この恐怖感覚は後のトビー・フーパー黒沢清といった監督の諸作品に通ずる。「分かっていたけど、本当にそう来ちゃうか」と期待通りの嫌な展開に覚えるえげつない快楽。奇妙な共犯感覚。

息子を逃がそうと奮闘する生命力旺盛な感じの憎たらしい夫婦がミスディレクション(笑)として上手く機能していて、終盤まで一気に見せる。予感を呼ぶ設定や伏線がそれに答える形で次々と活きて来る快感、全編行き渡った無駄の無い演出と展開は実に映画的。映画な映画。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] 袋のうさぎ クワドラAS[*]

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