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[コメント] 地獄の警備員(1992/日)

黒沢清監督はやっぱり『悪魔のいけにえ』にゾッコンのご様子。意欲作だが、成功作とは呼び難い。
HW

**ネタバレ注意**
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追っかけて来てゴツン!そのまま抱きかかえられて・・・といったそのまんまのシーンが随所に覗えるという事(もっともトビー・フーパーへのオマージュは黒沢作品では何時もの事ではあるだろうが)もあるけど、「ホラーらしからぬ題材をホラーに」という挑戦は明らかに『悪魔のいけにえ』を強く意識している。オカルト要素・SF要素を一切排除した、ただただその場にいるものが殺人鬼に訳も分からず殺されていくだけの映画がホラー映画となり得てしまう事を自分なりに再証明したかったんだろう。「商社ビル」というホラーらしからぬ舞台に「警備員」というホラーらしからぬ敵を配置して理由の分からぬ殺戮を展開、このアイディアは良かったと思う。

しかし、映画としては残念ながら失敗作。その原因は何より警備員のキャラクター作りで、『帝都物語』っぽい格好はご愛嬌として、曰く付きの元相撲力士というクドイ説明も怪力への説得付けとして許容範囲にするとしても、中途半端に深遠そうな事を語り出す所はせっかくの理解不能な殺人者という恐怖がボヤけさせてしまっていて、問題。「レザーフェイス」の革命性を熟知しているはずの監督が、途中で余計な欲でも出してしまったのだろうか。ただただ長身の警備員が惨殺(「惨殺」という観点ではこの映画かなりのもの、ロッカーのシーンは凄かった)を繰り広げる映画の方がよっぽど怖かっただろうに・・・。もう一人の警備員との関係も何だか蛇足。

監督が「B級ホラーというジャンルを日本にも根付かせたかった」との発言を残していたが、頑張った人はアッサリ殺さず仲間に救出させるようなB級映画リスペクトな展開はお茶目で好き。やたら影で恐怖を煽ったり、やっぱり地下室が出てきたりと毎度の怪奇主義もバッチリ。手放しでの絶賛は出来ないが、野心に溢れた興味深い作品だと思う。もっと評価されていたら、邦画に面白い展開が生まれていたかも知れない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

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