まず一つに、覚悟はしていたけど、結局は原作者の武勇伝って色合いが濃くてどうもスンナリ感情移入出来ない点。役所広司がいないと皆ダメダメで低次元なケンカばっかりで、さも1人で事件を解決したみたい。実際に警察内部の確執は激しかったのだろうけど、まるで主人公1人だけ真剣に奮闘していて、後の方々は名誉だの何だのに終始拘っていただけかのようにしか描かれず（特に長野県警の「いかにも」な愚鈍っぷりは頂けない）、「全く上司も部下も役立たずばっかでさぁ・・・」と嫌でも原作者のお声が聞こえて来ます。天海祐希の嘘みたいに従順な妻の姿も「うちの家内は理解があってねぇ」というジジ臭い自慢話にしか思えなくて正直ウンザリ。

次に、撃たれる警官がつくづくマヌケにしか見えない所。これはもちろん撃ってる側の描写にも問題。犯人側を描かないというのは一つの手段として良いと思う。でも、銃がひょっこり出てきて気まぐれにパンパン撃ってるだけというのはどうも手抜きにしか思えない。あんな手抜きの銃撃に当たって死んだというのでは、殉職者に対してあまりに失礼ではないのか？犯人側の内面を捨てるなら、警察側から見た恐怖を徹底的に描けなきゃダメでしょう。

それと、突入シーンは何処と何処から何処に向かって攻めているのかイマイチ分かりませんでした。こんな有名な事件に関してロクに知識を持ち合わせていない俺が悪いのかもしれないけど。

どうも余分にしか思えない箇所も多くて、やかん片手にダンスのシーンなんかサッパリ意味が分からん。ラストの帰宅エピソードも蛇足。誰がわざわざ役所広司の生足なんか見たがるかよ！（違

結局の所、原田眞人監督の意図が今一つ分からない。戦略性の無いアップの多用に目をつむれば演出は嫌いではないんですが、中身（映画ではなく監督の）がどうもスカスカなのでは？表面的なドラマはそれなりに出来ているけど、映画全体貫く「芯」が感じられない。あくまで社会派「風」のご様子。功労者への敬意はもちろん大事だけど、それだけの映画はいらない。取り立てた見解も無く、ただただ佐々淳行に言われるがままに、それっぽく撮っただけではあるまいか。