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[コメント] ストーカー(2002/米)

考えようによっては、本物のストーカーよりもタチの悪い作品。(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







お互いの会話がかみ合わない気まずく気持ち悪い空間、わざとそのように演出しているのかと思ったが、単に演出が下手なだけと次第に気づき始める。ロビン・ウィリアムズ 演じるストーカー、ナイフで脅したと思ったら、なんだか中途半端なことをやり始め、中途半端なところで逃げ出し、アクション的な展開になると思いきや、やけに中途半端なところであっさり捕まってしまう。それでも彼がストーカー行為をおこなう何らかの動機もしくは背景が明らかになることで、今までの話の展開がすっきりするのかと思っていた。そしたらよりにもよって涙ながらに何を言うかと思えば…

「えーん、子供の頃虐待されていたんで、やっちゃいましたー」

ストーカーなめんなよ(怒)。

……じゃなくて、こんなセリフ一つで彼のすべての行為を説明しようというのはいくらなんでもひどすぎる。これでは、虐待された子どもはそのトラウマから成長後皆ストーカーになるという、ひどく暴力的でありがちなステレオタイプに頼っているようにしか見えない。

そもそも今どき、アメリカの中流家庭の温もり(という幻想)に憧れるという設定がおかしい。ストーカーについて何も描いていないと同時に、あの家族も中途半端に崩壊させた後、放り出したままだった。結局、家族はストーカーの対象というだけの存在だったのだろう。他にも、ありきたりなクビの場面にしろ、陳腐なイメージシーンにしろ、ロビン・ウィリアムズの俺にはこんな引き出しもあるんだぞと言わんばかりの妙に力の入ったぎこちない演技も、どれもこれもとてもちぐはぐだった。そして何よりも、「シーモア」というアメリカ文学秘蔵の名前を安易に使用したことが個人的に許しがたかった。

フィリップ・シーモア・ホフマンあたりがストーカー役をやれば、それなりに観応えがあったように思えるが、だからといってそんな作品を観たいかというとちょっと微妙。

(評価:★1)

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