[コメント] 珈琲時光(2003/日)
これはこれで小津だと思った。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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とかく東京というと新宿の高層ビルだったり渋谷の人波だったりして、サイバーな町というイメージが先行するが、御茶ノ水や神保町あたりは軒先の狭いくすんだ色の「モダンな」店が立ち並ぶ。ぶらりと散歩してみたり、ちょっと一息ついてみたりするのに適した街である。それらの風景が映し出されるにつれ、自然と心が穏やかになっていく。
両親が一人住まいの主人公の家でくつろいでいるシーンが好きだ。大人三人が入るには手狭な部屋で所在げなく座っている父親の姿が何だか微笑ましい。何か声をかけようか、いやかけまいかと心の内で悩みながら、表面的には何でもないふりをする父親を演じる小林稔侍がうまい。自分と親の関係に思いを馳せた。
ホウ・シャオシエンの作品は静謐すぎて、退屈してしまうことが多いが、本作のように画面と自分の記憶(追憶)と結びつけるリンクのようなものがあると、その静謐な間が味わい深いものに変わっていく。その間は小津安二郎の間と通じるところがある。小津ほど突きぬけた視線ではないが、自分の持ち味を生かしたうえでの小津のオマージュということなら、かなりうまくいったのではないだろうか。
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