題材としていいものを揃えながら、『セントラル・ステーション』同様、この監督の作品はどこか消化不良を引き起こしてしまう。

何が物足りないのか明確にはわからないのだが、一つ考えられるのは予定調和にすぎるというところだろうか。ロードムービーは行き先が未知のものだからこそ、独特の開放感を観ている側も体感することができる。だが、本作の道行きはあらかじめ決められた一つの可能性に収縮していくように感じる。もちろん、実在の人物の実際の行程に沿ってやっているのだからそれはそれで仕方ないのかもしれないが、作品を通して革命家という結論以外の可能性やそれについての余韻を残すことがまったくない。側溝にバイクごとつっこんで泥だらけになったり、テントが強風に吹き飛ばされたり、これらの演出で強引に浮かびあがらせる無謀さと、何も書いていない白紙の上に身を投じるロードムービーにおける無謀さとの間にはかなりの溝を感じる。

うまく言えないのだが、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を観て、あてどのない旅に出たくはなるが、生真面目な本作を観てもあまり旅に出たいとは思えない。その違いだろうか。