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[コメント] コラテラル(2004/米)

さりげないエピソードもストーリーの中に強引に組み込んでいく、ハリウッドの病。(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭のタクシー運転手と検事の会話。二人の間で交わされる会話が、タクシー運転手の性格や人生観をあぶり出していく。その後の殺し屋とのぎすぎすとした言葉の応酬やロスの見事な夜間撮影が否応無しに緊迫感を高める。ちょっとした会話がタクシー運転手と殺し屋の人柄を映し出し、作品全体の緊張感を高めていく。男のドラマを描くマイケル・マンがようやく本腰を入れて、ヒューマンドラマの傑作を誕生させた。ジャズクラブのオーナーが語るマイルス・デイビスとのエピソードのところまでは本気でそう思っていた。

だが、そのオーナーが実は三人目の標的であったところから話が急速にアクション重視、ストーリー展開重視に変わっていく。演奏されていた「スパニッシュ・キー」も良かったし、あの会話だけでも十分印象に残るのに、なんでわざわざ本筋に組み込む必要があるのだろうか。ましてや、冒頭の検事とのシーンもそれだけで十分成立していたのに、わざわざ彼女を五人目のターゲットにして悲劇のヒロインに仕立てあげる必要があるのだろうか。今の時代にあんな間延びするだけのだらだらのアクションシーンなど不要だ。マイケル・マンがときに古臭く感じるのは、男の熱い魂を描くからではなく(このテーマそのものは色褪せたりはしない)、退屈で古びた物量に頼ったアクションシーンに話の展開を頼ってしまうからだと思う。

とはいえ、これらのアクションシーンが冒頭から中盤までの展開を全て台無しにしたというわけでもない。それよりも運転手と殺し屋の間の会話で描かれたプロ意識やそれでいて人間の根源的な弱さをついた部分は克明に描かれ、それらの心の揺れとあの夜の映像とはとてもよくマッチしていた。それは誉めておきたい。

(評価:★4)

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