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[コメント] 絶対の愛(2006/韓国=日)

消える(レビューはラストに言及、『うつせみ』のネタバレ要素もあり)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







キム・ギドクの前々作『うつせみ』同様、「消えること」がメイン・テーマであり、なぜそこを描くのか意図は判然としないのだが、「消えること」が執拗に描かれていた。ギドク自身が整形に関して何を言っているのかは知らないが、整形を手がかりに現代韓国社会の病巣を描こうとしたのではなく、あくまで自発的かつ物理的に「消える」ことを描く一手段として整形を用いたのではないか。現に、女は綺麗になりたいという通俗的な欲求からではなく、男の前で同じ姿形でいることを嫌うゆえに整形をする。

しかし、一時的に姿形を変えても新しい姿に慣れられてしまうと、消えたことにはならない。あまつさえ、男は前の姿の女の影を求めはじめる。消えることを望む女は、いつまでも消えてしまった以前の自分の姿に打ち克つことができない。

かたや、男は整形した後、女の前からもスクリーンからも姿を消してしまう。女は消えてしまった男の面影を一心不乱に求めるが、確証を得ることはできず、数人の男たちの前で何度も行ったり来たりを繰り返す。交通事故で死んだ男が彼であったのかもわからない。男は消えてしまった。そして、女は再び整形することで、まだこの世に存在していたかもしれない男の前から完全に姿を消す。かくして二人はお互いから完全に消えてしまった。

本作では、旧作『ワイルド・アニマル』のポスターを登場人物の部屋に飾り、当該作品で登場したロダン作のカミーユ像をも再登場させる。『ワイルド・アニマル』がどことなくレオス・カラックスの作風を思わせる部分があったのに対し、本作は同じフランスのフランソワ・オゾン作品のように、愛情や欲望の虚しさや不毛を描いていた。余韻を残す作品だった。

*足湯合コンは是非やってみたいと思った。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] moot SUM[*]

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