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[コメント] 愛情萬歳(1994/台湾)

ツァイ・ミンリャン作品を楽しむポイント。
グラント・リー・バッファロー

映画は自由であるべきだと常に思っているのだが、本作などを観るといつの間にか自分が映画というものに一定の形を求め、そこから外れたものを認めない姿勢をとっていたことに気づかされる。

誰かに感情移入するというよりは、希薄でぽっかり開いた空気に身を任せてみる。スイカに三穴を開けてボーリングの球に見立てたり、風呂場のジャグジーを使って洗濯してみたり、他人に言うまでもない、ともすれば自分でも無意識で展開しているような、一種の遊びなどをそっと楽しむこと。

ありふれた日常を撮っていくという姿勢からさらに踏み込んで、人には言わないようなとるに足りないことやそこでの空気を描写していくこと。変化に乏しい単調な展開に寝てしまう危険性もあるが、うまくいけば映画を観ていることを忘れ、街を一人であてもなくぶらついているような感覚におちいる。それは結構気持ちいい。

ただ、このようなツァイ・ミンリャンの作風からすると、外のぽっかりした空間が似合うと思う。彼がたまに描く薄暗い闇のシーンはとても苦手、閉じていく空間は似つかわしくない。(『』はそれが多く、苦手だった)

あと、説明的なシーンをほとんど挟まないので、ぼうっとしているとたまに展開を見逃してしまうのも弱点といえば弱点か。本作でいえば、最初に突き刺さったカギをそっと盗んでいったのが、シャオカン(リー・カンシェン)であることに気づかないと、彼らが何をやっているのかがほとんどわからない。まあわからなくても、作品の空気を感じられればいいのかもしれないが、私はその設定に後のほうで気づいた。嫌いにはなれない作品。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)YO--CHAN[*] moot evergreen[*]

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