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[コメント] 魚と寝る女(2000/韓国)

セックス&バイオレンス
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







湖の上に浮かぶ小屋で人間たちは用を足し、性交する。彼らが垂れ流した糞尿や精液が入り混じった湖に生きる魚たちがいる。その魚を湖の上の人間たちは釣り上げ、時には刺身のまま食べさえもする。この湖に死体は次々と沈められ、バイクなど死者がもっていたわずかな痕跡も一緒に沈められる。

この湖には人間の欲望(煩悩)の残骸が沈み、そこに色とりどりの小屋が浮かび、女はその下に潜り自由に行き来する。釣り人の気まぐれで半身を削がれた魚を釣り上げた男は、他の魚をためらいもなく殺しておきながら、この魚だけは殺さず逃がしてしまう。肉が剥き出しな瀕死の魚に自らの姿を見たからだろうか。男も女も自らの身体に釣り針を埋め込もうとする。二人とも自らが煩悩の湖に住まう魚であることを自覚しているようにも思えた。

セックスとバイオレンス、若者やチンピラを描く映画で散々に使い古されたこのモチーフをキム・ギドクが用いる際には、必ず日常の道具を使った暴力シーンが登場する。身の周りの道具がいつでも凶器に変わりうる怖さを描くためではなく、観る側の心理に痛みを焼き付けるための媒介物として敢えて日常道具が用いられているのだと思う。

近作に比べると初期作品の本作では、煩悩が人智を超えた何かに昇華する過程を描いていくピントが甘いし、あの終わらせ方は逆に俗っぽいと思う。しかし、ここでの強烈な色彩や痛みは脳裏に焼きついて離れない。暴力的な欲望を描いた初期のセザンヌの作品を思わせたりもする。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)irodori[*] ぽんしゅう[*]

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