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[コメント] シカゴ(2002/米)

ミュージカル映画では、なおいっそう禁句なのかもしれないが、それでも言ってしまいたい一言。「で、有名になって、それからどうすんの?」
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私事で恐縮だが、私にはリズム感や音感がまったく備わっていない。だから、歌や踊りが上手いのか下手なのかはまったくわからない。ゆえに、この作品、私にとっては歌や踊りがうまかろうがヘタだろうが、低評価であることに変わりはない。

ミュージカル鑑賞の資質に欠けている私だが、それなのになぜかときどきミュージカル映画は観にいく。『8人の女たち』なんかでは、ほどほどに歌と踊りを楽しんだ。ただそれはストーリーがあったから楽しめたのだと思う。

もっと女同士が火花を散らすところとか、過去を背負った女の愛憎や悲哀など味わうことを期待していた。別に人を殺しても、だめな夫を裏切っても、それを利用してのしあがろうとしても全然構わないが、その行為に対する各自の感情がまったく見えてこない。感情が無いところを歌と踊りで埋められても、まったく入っていけない。まともな判断材料がないので、どうしても彼女たちが、釣りをして行方不明になった人や、映画の試写会など「よいしょ系」イベントには必ず顔を出す人たちや、愛人の脅迫電話をわざわざ公開する人や、靴紐が切れたと審査員に涙ながらに訴える人(←これはちょっと違うか)と一緒に見えてしまう。

客が確実に入るのだから、映画にする意味はあるのかもしれないが、それ以外にわざわざ舞台を映画に置き換えた意義や効果が感じられなかった。本作ではミュージカルシーンと現実のパートの間に横たわるギャップをできるだけ解消するような見せ方をしていた。だが、そのぶん現実パートは、この部分はミュージカル部分ではないということを示すだけの記号的意味しか持たず、現実味にはまったく欠けていた。ミュージカル部分に従属させるための現実パートを映すぐらいなら、むしろミュージカル部分だけで繋げばよかったのではないか。これを観ると、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は現実とミュージカルの間のギャップについて、しっかり考察されていたのだと逆に気づかされる。(★2.5)

(評価:★2)

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