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[コメント] 8人の女たち(2002/仏)

確かに8人のうちの1人だけにベルリンの銀熊賞を授けようとしたら殺されてしまいそうな、つべこべ言わさぬ迫力に満ちていた。(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







8人の女優全員が銀熊賞受賞という宣伝文句を見て、ちゃんと8人の演技を観たうえで1人選べよ、と密かに悪態をついていた。よく調べてみたら、授与されたのは特別賞のようなもので、女優賞ではなかったから(女優賞は『チョコレート』のハル・ベリー)、それは特にこだわるポイントではないのだろう。

本作では8人の女優のそれぞれが、各自に与えられた役割を果たすというよりは、自分こそが一番と競っているかのように演技している(ように見えた)。誰が犯人かということよりも、誰が一番輝いているかを競うマッチレース。本作でアドリブは禁物、それを許したら女優たちが勝手に暴走してしまうことは目に見えている。女優に与えられる諸条件は平等でなければならない。あらかじめがちがちに決められた脚本を与えなければならない。歌の場面も平等に一人が一場面ずつでなければならない。各自に秘められたエピソードも同じ数でなければならない。地味な役回りの人には変身する機会を与えなければならない。極端にすぎるほどの平等を強いられた女優たちは、それでもその枷のなかでフィルムに自分の姿を焼き付けようとその存在感を強烈に振りまいていく。最後に死んだのは、家の主人ではなく、平等を強いることに疲れ果てた監督の姿だったのかもしれない。

正直いって筋自体は結構陳腐で、個人的には苦手な下品さと悪趣味ぶりで溢れかえっていた。だが、演じる女優の迫力には引きつけられるものがあった。8人のうちの誰か2人が話し合う(いがみ合う)場面が多かったが、そこでの会話はそれだけで別の映画に発展しそうな、独特の緊張と気品に満ち溢れていた。ふだんは作家主義で映画を観ているが、珍しく俳優主義で観る視点を思い出させてくれた稀有な作品。おもしろかった。(★3.5)

*蛇足だが、私が8人のうち1人を選べと8人に迫られたら、歌は目立つためにわざと音程外して歌っているだろとツッコミたくなるエマニュエル・ベアール、存在感は8番目に現れたからではなく、もったいをつけて8番目に現れるにふさわしいオーラを放っていたファニー・アルダンを選ぶ。(演技についてはよくわかりません。「つべこべ言わさぬ」と書いておきながら、結局つべこべ言っちゃってすみません。)

(評価:★3)

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