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[コメント] パリ、ジュテーム(2006/仏=独=リヒテンシュタイン=スイス)

短くても印象に残るものもあれば、記憶から滑り落ちるものもある。
狸の尻尾

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







パリを舞台、愛をテーマにした短編集。 1話が約5分弱、全18話で構成されている。

まず思ったのは。5分弱というのはやっぱり短い。短すぎる。 ぶっちゃけ見てる途中で、これははずしたな…と思った。また予告にだまされた!と。でも見終わってみると、思ったより悪くなかった気がするから不思議。

意味不明なもの、面白くないもの、肌に合わないもの。面白かったもの、好きなもの、印象に残ったもの。 それぞれが半々くらいだったかな。監督との相性を見るのにはいいのかも?

印象に残っているものをいくつか。

5話 16区から遠く離れて 移民の女性が自分の子供を預け、ハウスキーパーの仕事に出かける。邸宅の子供をあやす歌は、自分が置いてきた子供に歌ったのと同じ歌。ただそれだけを淡々と描いた、かなり台詞も少ない話なんだけれど。彼女の表情の変化を含め、とても印象に残った作品。

7話 バスティーユ 別れを切り出すつもりであった妻が病で短い余生と知った為、妻を恋する男を演じているうちに、二度目の恋に落ちてしまった夫。せつないような、道を誤ってしまったような…。良かったのか悪かったのか、なんとも微妙な気持ちになるお話。

9話 エッフェル塔 独りぼっちだった男が自分そっくりの運命の相手と出会った。 その馴れ初めを彼らの子供が語る。これだけだと凡庸な話であるようだけど、実は全くそうではない。なぜなら2人はマイム・アーティストだったから。とってもかわいらしい一編。そして実は一番笑ったお話。

12話 お祭り広場 とてもせつない。最後に医学生の彼女がこぼす一筋の涙は、うちの涙でもある。一番好きだったのはこの話かも。

18話の「14区」 これは全18話の中で一番身近で感情移入しやすい話に思えました。憧れの地パリへ旅行に来た、地味なアメリカ女性のお話。

彼女の感じる、旅先での小さながっかりやおのぼりさん感覚。自分がここで生まれていたら…と街並みを歩きながら夢想してみたり、隣に「きれいね」と伝えられる誰かがいたら…と、ふっとさみしく思ったり。どれもとっても共感できます。また、この仏語の作文を読み上げるような口調がたどたどしくて。

そして、彼女が感じた“あること”とは…。

これは旅先でなくとも、どこでだってきっかけさえあれば感じられるものなのかもしれない、と思います。

世界がとてつもなくきれいなことに気づいたとき、夕立の後の空の美しさに心を打たれたとき、その季節の最高の瞬間を今自分は味わっていると実感できるとき。

そういった時に感じる感覚は、彼女の感じたものに近いのかもしれません。

(各話の詳しい内容はこちらで) http://www.pjt-movie.jp/story.html

(評価:★3)

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