ヒラリー・スワンク演じる富豪の娘マデリーンの名は、ヒッチコック『めまい』の中のキム・ノバクの役名と重なる。デビッド・リンチの『ツイン・ピークス』でローラ・パーマーに瓜二つの従妹の名前がやはりマデリーンでありそこに『めまい』的意味が読み取れる、という指摘をどこかで読んだことがある。この名前はどうやら伝統的に「外見の似ている二人の女が、その女に惹かれる男の意識の中でダブる」ことを表す記号ということらしい。

名前の一致の他にも、階段のシーンが酷似していることや、ペペロンチーノさんが指摘されている諸々の点を見ればやはり、ここで『めまい』が意識されている、というか『めまい』そのものがかなり明確に目指されていることが分かる。ということは、マデリーンとダリアの容貌が似ていることはこの映画の肝なはずで、そんなに似てるっけ？と思わせるようでは失敗だ。一人二役が正解だったのではないかと思う。