宮崎駿は良い意味で商業的な監督だと思っている。

『もののけ姫』では見ている途中で眠ってしまった。つまらなかったのだ。『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』に至っては見る気も起こらなかった。

どんな高尚なメッセージがあろうと、途中で退屈になり観客に苦痛を与えるような映画は、駄作である。これが映画を１０００本以上は観てきただろう自分が出した結論の一つだ。

つまらなかったら終わりだ。

それよりは面白いほうがいい。

小難しいメッセージ組み込むんだったら大規模な宣伝すんなと、有名芸能人を声優に使って幅広い層の観客を集めんなと、常々思っていた。そんなのは渋谷の気取ったミニシアターとかでひっそりとやれって。マスを相手にしつつ、思想の深さを見せ付け「映画史」に残らんとする宮崎駿の姿勢には矛盾や乖離を感じていた。(賞をとって作品を後世に残し)未来人のために映画を作っているようでなんだか馬鹿にされた気分だった。

『崖の上のポニョ』は積年に渡る自分の（裏切られた）怨念を、吹っ飛ばした。

面白かった。単純に。

最後のほうなんかかなーーり強引だった。「地球が滅ぶ」・・・ってそんな話だったっけ？　おばあちゃんたちはなんで走れるようになってるの？　いや、分らなくてもいいんだ。この映画にはちゃんとした勢い（演出力）がある。

＊昔、『大統領の陰謀』とか『Ｚ』とかいった難解なサスペンス映画があった。登場人物がいっぱいいてごたごたしてて、些細な点とか全く把握できないんだけど、結局最後まで飽きずにハラハラしてしまうような映画だ。これはつまり演出力の成せる業なのだ。映画作品の隅々まで理解できたところでどうなる。それよりは単純に楽しめたほうが良い。理性よりも感情なのだ。

ポニョは可愛かった。ポニョ母も美人だったし。ポニョ父もいいキャラだった。映画館ではちゃんと子供たちの歓声も有った。よかったよかった。

宮崎駿には、今後もまず第一に、面白い映画を作って頂きたい。多くの人を楽しませる。それは誰にも出来ない才能であるはずだから。堂々と。