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[コメント] 赤い靴(1948/英)

パッション。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







赤い靴が踊る。

この作品の目玉はなんといっても劇中に挿入される15分程度のバレエだ。もちろん映画用に編集され、カメラアングルも変化に富んでいるのだが、それでも丸々1本のバレエが挿まれているのだから驚きだ。一歩間違えれば不粋で下手糞なやり方だと評価されても不思議ではない。

だがバレエ場面の挿入は不可欠だった。この演出によって作品が一段上のレベルに持ち上げられているといっても過言ではないだろう。とにかく面白くて分りやすいのだ。序盤でストーリーの説明が成されている為でもあるが、正直バレエがこんなに平易なものだったとは!というのが感想だ。圧巻。この作品を観てバレエを始める人がいたっておかしくない。

ちなみに本作品のおかげで私もバレエに関心が向いたのでバレエ教室に通うことになりました。←嘘。でもテレビで「白鳥の湖」を見て鳥肌が立ってしまった。これは本当。

劇中のバレエが良かったのは分りやすい為だけではなく、実に情熱的で生き生きとしていたからってのも大きい。「舞う」という行為は技術的な要素よりも、むしろ踊る当人の意思や情熱が如何に表現されこちらに感じられてくるかについての要素の方が重要なのではないだろうか。こんな認識を抱かせられた。これは映画(演技)についても当て嵌まりそうな気がする。

さて、このバレエ「赤い靴」はそのまま映画『赤い靴』と重なっているわけだが、単純にストーリーが同一なだけではない。映画自体も非常に「感情」「情熱」といったものが強く溢れている。まるでバレエの場面で魅せつけた躍動感が映画中にも広がっているかのように。

熱い映画なのだ。

色彩によるものも大きいだろう。

例えばオープニングの学生達が劇場へとなだれ込む場面。鏡を割る場面。更にはビッキーが電車に飛びこむ場面(かなり衝撃を受けた)、ラストの演説の場面etc。探せばいくらでも見つかる。そこにはいつも「生身の人間の持つ根源的な激しさ」みたいなものが他の映画よりも強く感じられてきた。キャラが立っている、というのとは少し異なる。

それは多分、登場人物がみな各々の人生を踊っているからなのだ。これは強調しておきたい。バレエ「赤い靴」の筋書きだけでなく、そこに宿るパッションさえも映画に移植してしまった、クールなんて言葉を忘れてしまう作品だった。

「人生は踊り」などという表現を最も的確に感じられる作品の一つに間違いないだろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ナム太郎[*] はしぼそがらす

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