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[コメント] アメリカン・スナイパー(2014/米)

戦場にいれば英雄、国に帰れば戦争後遺症とレッテルを貼られる彼ら。ディア・ハンターやランボーなどこういったテーマは数多く観てきたし、戦争後遺症というのを分かろうとするんだが、分からない部分が多い。
ギスジ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







イラク戦争でのシーンは、スナイパー対スナイパーというお互いプロフェッショナル同士との殺し合いが大変面白く、見た目もタフガイなクリス・カイルを頼もしくもドキドキして観ていたんですが、本国に帰ると戦争による後遺症らしき症状が頻繁に出てくる。たぶん本人は平静を装って「自分はそんな後遺症は無い。」と思うんですが、反射的につい出てしまう。日常でありふれた、たとえばバイクが通ればその音に全神経を傾け、日本製のライトバンが自分の車の後ろにつけば「敵じゃないか?」と警戒したり、産婦人科で自分の子供が泣き叫んでいるのを見れば「なんとかしろ!」と突然看護士に切れだしたり、犬が子供と「バウバウ!」とじゃれあっていると「噛み殺されるんじゃないか?」と自分の犬を絞め殺そうとする。観ていてとても怖いなと思いました。こんなんじゃ生活に支障は出るよ。本国に居るほうが戦場より絶対安全なはずなのに、日常にありふれたバイクだったり犬の叫び声、何気ない音とかが彼を苦しめる。しかも音だけじゃなく、奥さんと一緒に居ても気持ちはどこかに行ってるんですよ。戦場にいれば伝説のクリス・カイルになるというのに。

戦争を経験していない僕からしたら、彼らが日常の些細な事で何故パニックになるのか?というのは映画を通して分かりそうだけどやっぱり理解しがたい事で、そもそも4回も志願して戦場に行く彼の行動が到底理解出来ない。ハート・ロッカーで覚えた言葉で「戦争ジャンキーなんじゃないか?」とか思ってしまいます。クリス・カイルだけを焦点に合わせて戦場を見れば、伝説のスナイパーと言われるだけあってカッコイイ兵士だなと思うんですが、他の一般兵士だけを見るとやっぱり戦争は地獄だなと思ってしまいます。命がいくつ有っても足らないと思うわけです。そして国に帰れば見えない後遺症に苦しむ。個人的には本国でのお話が怖いし大変だなと思いました。思うのですが、国は彼らに解決法はちゃんと用意してあるんでしょうか。当然カウンセラーもあるんだと思いますが、正直ああいう人が隣にいたら日常会話はいいとしても、怖くて近寄れないですよ。本来ならこういった戦争後遺症の人達をより理解する為の映画なんだろうが、やはり身近にいたら怖いし近寄りたくない。彼らがどこが引き金でパニックになるのか?というのは兵士一人一人によっても違うだろうし、酷いこと言っているなと自分で分かるんですが。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)もがみがわ[*] サイモン64[*] G31[*]

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