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[コメント] ALWAYS 三丁目の夕日(2005/日)

冒頭の手作りヒコーキから涙腺が緩んでいるんだからどうしようもない。まさに何度となく涙を搾り取られた133分。
tkcrows

原作が短編だからということもあるだろうが、総体的に出来が良いとは決していえない。視点が小説でいう一人称になったり三人称になったりするような居心地の悪さが常に感じられたし、あまり気遣いの感じられないシーン変わり(こちらの思い入れなどまったく関係なしにブツッと切れたり、急に素に戻らされるフェイド・トゥ・ブラックなど)など、細かいところが特に気になった。

それでも何度となく涙を搾り取られた理由はただひとつ。「羨ましさ」だ。

誠実にあろうとするのではなく素のまま接することが誠実なんだ、ということを意識することなく当然のように思っていた、あの時代の人たち。「人との繋がり」が日常のすべてだった時代に生きられたことがなんだかとても羨ましかった。これはまさに金で買えるようなものではない。あの終盤の竜之介と淳之介の気持ちが無理やり我々の気持ちの中にグイグイ入り込んでくるように、あの時代には、ちょっと押し付けがましいけど手放すことのできない「豊かさ」が溢れていたのだ。

物語はベタである。しかし、ベタだと感じるのはあくまで現代からの比較対照なのだ。あの頃はこんな話、ベタでもなんでもなかった。そんな時代を「遠い思い出」とするしかない現代。前に進むしかない日本はもう二度とあの頃に戻ることはできない。それが羨ましくて悔しくて、私は何度も涙した。今の日本を築いてきたのは現在既に一線を退いたお年寄りたちだ。こんなことを聞かされると今の若者たちはうんざりするだろう。しかし、本当にこんな人たちが戦後の日本を今のようにしてくれたんだ。そう確信できるものがこの映画にはある。

莫大な大金よりも豊かな宝が、少しずつ指の間から零れているのを知っていたのに何もできなかった我々。その豊かな宝とはいったいなんだったか、それを思い出したければこの作品を観れば良い。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)おーい粗茶[*] 浅草12階の幽霊[*] 直人[*] けにろん[*] jean[*] 水那岐[*] 荒馬大介[*] sawa:38[*] ナム太郎[*]

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