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[コメント] 真実のマレーネ・ディートリッヒ(2001/独=米)

 一生伝説を崩さないことを身の上にしていたお方の私生活を除くなんてそんな、と思いながら観にいったのだけれど、そんな心配は必要なかった。今までさんざん本や舞台で語り尽くされたことの焼き直し。
にくじゃが

 まずよいところを挙げると、それまでずっと中心的な語り手であったマリア・ライヴァさんが、ディートリッヒの死の直前あたりになると画面に登場しなくなったのが印象的だった。伝説を崩さないで守り続けよう、というところに母娘の絆が感じられました。この控え目さは好き。

 そして気にくわないところといえば、この映画にあるのは教科書みたいにきれいなエピソードばっかしであるところ。そこにいるのは超人ディートリッヒであって、ナチズムの前に苦悩した彼女はいない。大戦中、大戦後、ずっと彼女についてまわった亡霊もここにはいない。「もし、権力を持ったドイツ最高の女優になっていたのならば、大勢のユダヤ人を救うことができたのではないか。」「自分は彼らを見殺しにしたのではないか。」そこに一生なやみ続け、麻薬やアルコールに救いを求めて体を壊した人間マレーネはこの映画にはいない。私が愛するマレーネ・ディートリヒの一部分しかこの映画は語っていない。(もちろんノーパン生足の話もない。)

 恋人代表がジャン・ギャバンだってのも気にくわない。ほかにも大勢いただろうが。せっかくバート・バカラックもいるんだし、そのことも聞きなさいよ。被写体に遠慮しすぎ。それとも単に探求心に欠けているのかしらん? まあそしたらありきたりの話を当たり障りなく描いているのもしょうがないか。でもそんな態度なら、ドキュメンタリーなんて作らないで欲しい。マレーネと向き合うつもりなら、彼女と同じ覚悟で、彼女の虚像と実像に対決して欲しい。虚像を壊すつもりがさらさらないなら、こんな映画観ないで彼女の映画を繰り替えし観たさ! 

 でも大画面で憧れの方を観られるのはとてもうれしいので、たとえ挿入される映画の年代が語られている時代と合わないときがあっても、戦争の話が30年代と40年代でごっちゃになっていても、途中うとうとしたところもあったけれど、大目にみましょう。ものすごく甘めの三点。

(評価:★3)

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