[コメント] 暴力金脈(1975/日)
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クライマックスの株主総会で、曽宮(若山富三郎)の愛人が彼の娘であったこと、そして自ら命を断ったことを、敢えて口に出さずに詰め寄る中江(松方弘樹)。「今すぐ社長なんか退陣せぇや。いや、人に命令を出す立場なんかすぐに降りろや!」。しかし西島(丹波哲郎)がその発言を遮ります。「議長! 総会の速やかなる進行を求めます!」。羽交い締めで会場の外へ連れ出されそうになる中江。
いや、普通こう来たら、最後は若山の「私は・・・、私は退陣する・・・」でしょうよ。勝ち誇る松方と苦渋の丹波の対比で「終」でしょうよ。それが何ですか。突然ペッポコペッポコとファミリードラマみたいな音楽流して、「(茶番じゃあ。みぃんな茶番じゃあ)」って松方のナレーション。若山も普通に質疑応答とか始めちゃってるし。これじゃ茶番はこの映画です。ペッポコいってる場合じゃないです。
やりたいことはわからないでもないんですけどね。王道のエンディングに持っていかないことで、財界の伏魔殿ぶりをより強く描き出そうとしたんでしょう。人の思い込みや情けが一切通用しない世界であることを唄いたかったんでしょう。
でも今作は、そこまでの展開からしてそういうシビアな作りをしてなかったわけですよ。小沢栄太郎は松方に全てを譲り、梅宮辰夫は組の威信を賭けて松方を推し、池玲子に至っては己の命を持って松方を勝利に導いたわけじゃないですか。最早スポコン的といってもいいような流れでクライマックスを迎えておきながら、最後の最後で「財界ってシビアなんだよ。ペッポコペッポコ」って言われても困ります。王道が全てとは言いませんが、王道を外すならそれに代われるだけのものを持ってきてから外してください。
冒頭に書いたように、映画全体のトーンは緩急が効いてて楽しかった。何をしているのかわからなかった「総会屋」の内幕も知れて面白かった。前半田中邦衛、後半丹波哲郎っていう敵役も、グレードが上がる感じがあって良かった。普通に終わっていれば★4でも良かったのになぁ。最後の最後でぶち壊しです。ペッポコいいやがってこんちくしょう。
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