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[コメント] 銀河ヒッチハイク・ガイド(2005/米=英)

シニカルかつ暖かいお話は大変好みなんだけど、後半になるに連れ苦しげになってくる。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 僕はイギリス的なシニカルで下らない笑いを非常に好み、同時にディズニーの美しき人畜無害も大変に愛する男です。今作はこの相反する二つが入り混じっている作品なわけで、それは受け取る人によっては「打ち消しあっている」とも見えるし、逆に「一粒で二度美味しい」とも取ることができる。個人的好みで言うなら、僕にとって今作は大変に楽しめる作品でありました。基本前向きなストーリーは観ていて気分がいいし、「タオルでしばかれて逃げる宇宙人」とかも下らなくて可笑しかった。

 何より惑星製造工場をゴンドラで移動するときのあの景色。ディズニーはああいう「そのままアトラクションになりそうな景色」を作らせると本当に上手い。『モンスターズ・インク』のどこでもドア倉庫がその最たる物だと思うんだけど、今回もそれに匹敵するばかりの「僕もそれ乗りてぇー」感に満ち溢れた景色だったと思います。

 ただし、ラストに向かってのストーリー展開は正直骨抜き。この手の「ディズニー版SFコメディ(正確にはブエナビスタか)」を観るときに、こっちにはどうしても「『ギャラクシー・クエスト』をもう一度!」って気持ちがあるんですよ。僕らはあのシニカルな物語のそれでも前に進む格好良さに心打たれたんです。ところが今作のアーサーはまったく格好良くない。

 というのも、彼が自ら物語を紡ぎ始める瞬間が訪れないからなんです。雪原に一人残されたときに老人から助けられ、そのまま地球も再生してもらえることになるし、家に帰れば仲間も勝手に助かって飯食ってるし。ラストの銃撃戦だって鬱ロボットが一人で敵を倒してくれるでしょう。彼がやったことと言えばネズミ退治くらいですよ。それじゃああまりにインパクトが弱い。

 やっぱり後半になってから物語が登場人物の手を離れてしまった気がするんですよね。誰も制御し得ない状況のまま物語が勝手に転がってしまった。それもかなり急ぎ足だから、あちこちが説明不足なんです。惑星工場の老人がなぜ彼を助けたのかとか全然わかんない。「42」って答えなんかは不条理ギャグだからいいんですよ。でも説明すべき場所が説明不足になると、対比としての不条理が活きてこなくなる。そのユーモアセンスは好きだし前半に勢いもあっただけに、ラストでもう一段階、人物像で盛り上げて欲しかったと思いました。

 でもまぁ笑ったのは笑ったから充分及第点ではあるんですけどね。原作は続編があるらしいけど、もし作られたら観に行きます。そんな思いもありつつ厳しめの★3。

(評価:★3)

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