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[コメント] オーシャンズ13(2007/米)

目指すべきはバカでユルくてオシャレな映画なのだ。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 多くの方の賛同を得られないことを承知で言わせてもらうと、前作『オーシャンズ12』は最高に愉快で幸せな映画だったと思う。『オーシャンズ11』が名作『オーシャンと十一人の仲間』のリメイクという足枷の付いた映画だったとすれば、「12」はそこから放たれるや否や、そこらに転がる金目の物を抱えて見えなくなるまで逃げ去ってしまったような作品だった。豪華な出演陣や洒脱な画作りを得意とする監督はそのままに、彼らにユルユルの会話と抜け目だらけのトリックを繰り広げさせたんだ。豪華でユルくてオシャレな空間。大スクリーンを通してその中にたゆたっている時間は、正直かなり居心地が良い幸せなものだった。

 ところがこの「12」、まぁ当然といえば当然過ぎるほどに世間の評判は悪かった。もちろんシネスケにおける評価も低かった。そして何より、出演者たちからの評判まで悪かった。丸坊主に銀ピカジャケットが死ぬほど格好良かったブラッド・ピットや自分の見た目の年齢を気にしまくっていたジョージ・クルーニーが、「今度の13はスゴいぜえ!まぁ12はほら、あれだったけどな」的発言を繰り返す度、僕はもういかんともし難い喪失感に見舞われたものだ。考えてもみてほしい。周りの客がマズいマズいと言ってるラーメン屋に行って、勇気を振り絞って店主を褒めたんだ。「俺はこの店の味好きだよ」と。そしたら店主の野郎が「いや、俺もこれは食えたモンじゃない」とか言いやがったんだよ! 梯子に昇らせてから外しやがったんだよ!

 というわけで、そんな「12」の反省を踏まえたのだろう。今作「13」は「12」よりもだいぶ「11」に揺り戻した、まともな映画になっていた。しかも「12」で見せた素敵なユルユル感も、頻度こそ落としてあるがそこここに顔を出している。要は「11」と「12」のいいとこどりの映画になっているってことだ。トリックは前作ほどバカバカしくない。メキシコの労働闘争のパートは本当に最高だ。そして出来上がったのが、見事なまでに☆3の中庸映画だった。

 だってさ、世間的にダメな「12」から「11」寄りに戻してバランス取ったみたいなことになってるけど、そもそも「11」ってかなり大したことない映画だったんだよ。製作陣そのこと忘れてんじゃないだろうか。輝くばかりに☆3な映画を手本にしたって、☆5の映画が出来るわけないでしょうよ。

 真面目な話をするなら、いや今までだって充分真面目なんだけど、今作の最大の失敗は「クライマックスが散漫」ということだと思う。あちこちでいろいろな仕掛けを打つことで、真のクライマックスである「セキュリティーがダウンしている3分間」の高揚度が力を持てなくなってしまっていたんだ。あのシーンはもっと急かして急かして稼がせて稼がせるという荒波を見せて欲しかった。

 結局そういうことなんだ。今作が目指すべきは「11」的ないい子ちゃん映画ではなく、「12」を更にもっと推し進めたメチャクチャにバカでユルくてそれでも最高に格好いいという至高の作品であるべきだったんだ。ちょっと評判悪かったからってへこたれちゃダメなんだよ。ハリウッドセレブがこんだけ揃ってんだから、文句を言う奴は金と権力で黙らせればいいんだ。

 噂によると続編の製作もまだまだあり得るらしい。スティーブン・ソダーバーグ先生を初めとするハリウッドセレブな皆さんが、己の進むべき道を見出してくれることを強く期待して止まない。止まないのだ。

 あと最後に、エレン・バーキンが「爛れたキャメロン・ディアス」みたいで大変に興奮した。興奮したのだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] トシ

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