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[コメント] 県警対組織暴力(1975/日)

主人公たちに「悪事を働く覚悟」が足りないように見えるため、スクリーンの中に感情移入する対象が見つからない。「必要悪」って言葉の核は、「必要」ではなく「悪」の方にあるんです。もっと腹くくってかからんかい!
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 要は「悪さするんならその自覚をちゃんと持ってやりなさい」ってことなんですよ。菅原文太演ずるこの久能、その辺がどうも甘いというか何というか、「自分は結果的には正しいことをしてるんだ」って思ってやってるように見えるんです。「こうすることがヤクザのコントロールにも繋がるんだ」というようなね。だから梅宮辰夫に反対されても、結構堂々と我流を押し通そうとする。

 だけど基本的に「悪事は悪事」ですからね。しかも自分、松方弘樹をトップに押し上げて甘い汁を吸おうって魂胆があるわけでしょう? だったら変に「これが正しいんじゃ!」みたいな顔するなって。

 結局、その辺の覚悟の無さ(言い換えれば、正しいことをしているという自信)が故に上層部に対してガードが甘くなり、付け入る隙を与えてしまったように見えるんです。悪いことしてるクセに中途半端に愚直なんですよ。だからつい「もうちょっと上手く立ち回ればいいのに」と思ってしまい、どうにも気持ちが入れられなかった。ラストの暗殺も「あらら、だから言わんこっちゃない」みたいに思っちゃう。

 まぁだからと言って松方弘樹も早とちりの恩知らずだしねぇ。覚悟のレベルでは梅宮辰夫が一番高いんでしょうけど、これもまた感情移入をさせてくれるキャラクターではないし。

 やっぱり、「どうにもならないまま追い込まれていく古き男たちの悲哀」を描くなら、もっと徹底的に「これはどうにもならない」と思わせてほしいです。僕なんかは「あぁ、これはしょうがない」と思えるようになって初めて気持ちが入るようになり、そうなってやっと「切なさ」や「虚しさ」を感じることができるんです。それが叶わなかったため、結局傍観者の視点のままで2時間が終わってしまいました。話の展開は非常に魅力的だっただけに、ちょっと残念。

(評価:★3)

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