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[コメント] 戦国自衛隊(1979/日)

20年ぶりに再見。自分が大好きだったこの映画が「戦国自衛隊」などという物ではなく、「戦国千葉真一」だったことに気づかされました。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 半村良の書いた原作には、「自衛隊という存在の不確かさ」、「戦わなければ生きられない男たちの悲哀」、「歴史という存在が持つ強大な矯正力」など、それはそれは様々なテーマがありました。ネタバレになるんで細かくは書きませんが、主人公が「戦争のできない軍隊なら、この時代にいた方がいい」っていう結論に至ることを“折り込み済み”で、歴史が伊庭小隊を戦国時代に寄こした、というのが物語の核になっていくわけなんです。

 でも映画ではそれらを全て描くだけの時間がなかった。だから「伊庭=織田信長」であることは匂わせるに止めて、「戦うために存在する自衛隊が、戦うべき場所に送られたことで起こるドラマ」に焦点を絞ったんです。「戦う男たちの友情と悲哀」を打ち出そうとしたんです。

 ところがここで思わぬ事態が起こりました。千葉真一が、自衛隊以上に「戦わなければ生きられない」オーラぷんぷんだったんです。設定以上に説得力抜群だったんです。もうねぇ、別に自衛隊とかじゃなくていいです。千葉ちゃんだったら、サンリオショップ店長だったとしても天下を狙うはずですよ。ある意味完璧すぎるキャスティング。だからこそ、隊の面々が千葉真一に「ついていけません!」と行った時に、我々は「そうだろうそうだろう」と思うわけなんですよね。千葉真一と向かい合うと、戦う男たちですら「こちら側」に置かれてしまうんです。千葉ちゃんはベストアクトですが、この映画は「戦国千葉真一」です。

 あ、でもそう考えてみると、かまやつひろしみたいに途中でいなくなった隊員たちの方が、「今いる時代に生きようとする」という点において、千葉真一に近かったのかも知れませんね。渡瀬恒彦なんてその最たるもので、千葉真一は彼に自分と同じ物を見続けていたように思えます。だからこそクーデターを阻止することで彼を救い、彼の死に面した時に涙したんでしょう。「ゴーイングホーム」の曲をバックに、渡瀬の遺体の乗った船をヘリで牽引するシーン。あそこはまるで母親が駄々っ子を家に連れ帰る景色のようで、非常に魅力的なシーンだったと思います。

 信玄を拳銃で倒した千葉真一が、景虎に銃で倒されるのも良かった。あれは千葉が歴史に対して放った銃弾が巡り巡って己に返ってきたという悲劇であり、同時にこの時代においても、純粋すぎる千葉の武士道が生きる道などなかったんだという悲劇だったんだと思います。

 ちなみに何故に僕がこんなに興奮しているのかというと、7歳にして生まれて初めて劇場で泣いた作品がこれだったんです。三つ子の魂百まで。どうもこの段階で「同族」にされていた模様です。でもあれだよね、夏八木勲と千葉真一のガチンコ勝負だったら、そんなもん千葉真一が勝つに決まってるよね。ひゃっほう!

(評価:★5)

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