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[コメント] 少林寺(1982/中国=香港)

少林寺の壁画伝説を元に脚本をを書いたということなんですが、むしろカンフー映画の基本ライン「仇討ち」に「壁画を沿わせた」感じの仕上がりになっている気がします。あと酔拳使いの鼻はやっぱり赤かったです。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 つまりは本来政治的な物語であるのに、それをかなり仇討ち側にシフトさせた脚本になっているということ。仇敵である王将軍は、その「仇討ちを成り立たせるために」カンフーの達人でなくてはならず、自ら馬を下りて坊主と決戦しなくてはならない。そして後の唐2代皇帝・李世民もまた、そのストーリーのためにたった一人で敵陣深く潜入し、何故だか馬泥棒までしなくてはならない。あんたら王様なんだから、他にもっとやることあるでしょう。

 対する僧たちもまた強烈で、「殺すべからず」と口々に唱えながら、最終的には殺すことを肯定しながら大団円へと向かっていく。それが如実に表れるのが、それまで口うるさくリー・リン・チェイを追い出そうとしていた偉い僧が、若い僧を殺されたことで怒り、「殺せ!悪漢を殺せ!」と叫ぶシーン。これってかなり僧にあるまじき発言だと思うんですけど、このシーンは彼と他の若い僧たちとの「相互理解」を示すためのシーンなんですよね。そんな理解はどうなのよ。

 まぁ実際の少林寺もこうやって時の権力と手を結びながらやってきたんだろうし、それを「大衆受けする解りやすい物語」にするためには、政治色を抜いた仇討ち物に仕立て上げる必要があったってことなんでしょう。考えてみれば、上記の偉い坊さんの怒りも「仇討ち」だし、酔拳使いの物語も「仇討ち」。「忠臣蔵」然り「アラモ砦」然り、いつの世でも大衆に好まれるのは「復讐譚」なんだなぁと、改めて強く感じさせられた作品でした。

 ただし! この映画の見るべきところは全然そんなところじゃありません。これだけ複数の中国チャンピオンが、出し惜しみなしで多彩な拳法を観せてくれることが大事なんです。「酔拳」なんてそれだけで映画作れちゃうくらいなんだから贅沢な話ですよ。だからストーリーは解りやすくていいんです。戦闘シーンで坊さんの区別がつかなくてもいいんです。あれだけのスゴい技が出せる人が豊富にいて、同時にそれを受けられる「ヤラれ役」が豊富にいる。その土台の広さに驚かせていただきました。

(評価:★3)

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