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[コメント] 山口組三代目(1973/日)

仁義なき戦い』の後を受け、東映「実録ヤクザ路線」が満を持して放つ大作!だったはずなのに、鶴田浩二などのバックでもある山口組に気を遣いすぎて、ファンタジックな「任侠映画」に逆戻りしちゃった。しかも「任侠映画」としては醍醐味に欠ける。
Myurakz

 結局「実録路線」の面白さって、表では仁義仁義言ってるヤクザが、一度裏に回ってみると、壮絶なまでの裏切り合い騙し合いをしているっていう部分にあると思うんですよ。そこに垣間見える人間の業とか生命力とかね。

 それが今作には一切と言っていいほど出てこない。それもそのはずで、当時ほぼ日本を手中に収めていた田岡一雄という大親分に関して取材した時に、それを悪く言える人なんて出てくるはずがないんです。「あの人ほど仁義に厚いお方はいない」だの「親分こそが任侠道や」なんて話ばっかりで、出来上がってみたら「二宮金次郎みたいな」三代目になっちゃってたらしい。みんな死にたくはないもんね。

 むしろそっちの方がよっぽど実録の面白さが出ている話だなぁと思うんですが、残念ながら映画は教科書みたいな「任侠物」に仕上がっちゃったわけです。しかもじゃあ任侠物として観てみようとすると、今度はカタルシスが足りなさ過ぎる。ドラマチックな事件が起きないんですよ。まぁヤクザなんてイメージ先行のご商売だから、現実はこんなものなんでしょうけどね。

 生い立ちから組に入るまでの辺りは、サクセスストーリーとしてちょっと面白かったんですけどね。後半になると「普通の事件」をさも「大事件」であるかのように語ってるのが見えてくるので、妙な胡散臭さばかりが鼻に付くことになっちゃいました。

 まぁ何せ大親分が本名で登場ですからね。そりゃ黒い部分も描けないわけで、その辺の鬱屈が『日本の首領』シリーズに繋がっていったということみたいです。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] sawa:38[*]

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