無人島での人知を尽くしたサヴァイバルを期待した御仁にはまったく評価されずに、期待はずれのレッテルを貼られてしまった本作だが、私は大好きだ。

いい映画である。

作品の中の無人島生活は「大掛かりな小道具」的意味しか持たずに、主人公の人生にある転機をもたらす存在としてあえて軽く描かれている。余計な演出（必要以上のハラハラドキドキ）を排して、主人公が膨大な時間の中で、自分を、人生を見つめなおす様をクローズアップする。また、起伏に乏しい展開を演技カで引きつけていくトムも見事である。

無人島でなくなった贅肉は「物」や「金」の象徴であり、貨幣経済が生み出した「幻想としての幸福」だ。

タイトルのキャストアウェイとは「難破する」という意味だが、ゼメキスの視点は肉体的な「難破」ではなく精神的な「難破」に重きがおかれている。南海の孤島なんてどうでもいいのだ。時間に追われて窮々と生活している現代人と正反対のイメージだけ浮彫りにすれば十分なのだ。

人生は難破の連続。

レールの上を走り、ポイントごとに二者択一していくなんてのはみせかけの人生。リアルな人生は選択が四方八方に無限に広がっている。そう、まるで難破している時の人間の行動のようなものだ。ひとつひとつの行動は白地図上を手さぐりで歩くように自分の手で足で切り開くのみだ。

そう、人生は無限に連続する十字路なのだ。