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[コメント] あの夏、いちばん静かな海。(1991/日)

歩く。走る。いっしょに歩く。じっと彼と海を見る。石を投げる。服をたたむ。素晴らしく普通な二人の恋愛映画。
ALPACA

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画を物語として思い出そうとすると、寧ろ「クサイ」としかいいようのない単純なプロットでできている。しかし、何度も見返すことに耐えうる映画となっているのは、普通でケナゲな二人の振る舞いだ。歩く。走る。一緒に海を見る。歩く。

そこにはこれっぽっちも、愛を囁く言葉などありはしないし、体を求めあうこともない。

ただ、二人ですごす時間のタシカさが伝わる。それはもしかしたら、聾者である必要もなかったかもしれないくらい、ここでの演出は。。あるいは、二人の演技は、胸をうつ。

あざといなどととても言えない。

この映画をガラガラの映画館で観たとき、まったく予備知識なく観ると、途中まで、二人が聾者であることに気づかないのだ。ただ無口な二人?と、どこかでさりげない説明が入るところで、そういえば、そうなのか。と気づくだけだ。そして、だからといって、そこだけを泣きのポイントにしているだけではない。この素朴な、健気な、懸命な、振る舞いに胸をうたれるのだ。

あかたも、観るものにも音を省いた世界を示すかのように、ギリギリの音しかこの映画には聞こえない。

映画で使われる「青春」やら「愛」やらの記号のようなものに、疑いを持つ者のシンプルな回答と受け取りましたよ。

観れば観るほど大島弘子さんが愛しくてしかたない。服をたたむ振る舞い。彼のいる場所をじっと見る普通の目。 ラストに彼女が出てこないからこそ、彼女の側から彼の死を思って仕方ない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (12 人)たかひこ ホッチkiss[*] ネギミソ tat いくけん 立秋[*] kiona 1/2(Nibunnnoiti[*] sawa:38[*] ina [*] けにろん[*]

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