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[コメント] 夜と霧(1955/仏)

この映画はユダヤ人迫害を知るには欠かせない存在に思える。僅かな時間でこの映画を"見て"感じることは、その時間の何倍もの価値がある。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『二十四時間の情事』を見てアラン・レネ作品に興味が沸いたので自らレンタルして見ることにしたのだが、実は高校の世界史の授業で一度見ていたらしい。その時はあまりしっかりと鑑賞していなかった。しかし、改めてしっかりと見直して思ったのだが、ナチスによるユダヤ人迫害の事実を映像でここまで見せてくれるとは関心だ。高校の先生が授業でこれを見せる理由も肯けた。それをしっかりと見ていなかった自分には反省せざるを得ない。こんな重要なものを見なかったなんて・・・!これは絶対にまじめに見るべき映画だったのだ。

 30分ほどの短編だが、長さとは反比例して強烈な印象を受ける。ユダヤ人迫害について"見て"感じるものは大きいはずだ。冒頭、カラーで現在の強制収容所跡地を見せる。広がる草原には何もない。そして、ユダヤ人迫害という過去の事実をモノクロで見せる。静止画と動画を組み合わせ迫害の事実を見せる。そこには全く容赦がない。迫害によって殺されたユダヤ人の死体の山、それを撤去する様子など実に痛々しい。これが事実としてあったことが非常に恐ろしい。現在を見ると何もない土地に秘める過去がここまで悲惨とは非常に恐ろしい。死体から石鹸を作り、女性の髪の毛は絨毯と化す。とても人間のすることとは思えない。たかが、30分の映像を見るだけで、スピルバーグが『シンドラーのリスト』で伝えようとしたこと以上を感じることは間違いない。

 映画の最後でのナレーション。「誰に責任があるのか?」。単にナチスを批判した映画ではないように感じ、非常に複雑になった。映像からだけでなく、ユダヤ人迫害について後世に残す、そして問いかける大きな意味がある。これは映画という媒体を通した貴重な"記憶"だ。

(評価:★5)

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