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[コメント] ナイロビの蜂(2005/独=英)

ケニアをリアルに描いているのだろうが、『シティ・オブ・ゴッド』で描かれたブラジルに比べると映像に力を感じられなかったのが残念。しかし、弱者に目を向けるフェルナンド・メイレレスの視点、それが良くわかったのは収穫だった。(2006.05.13.)
Keita

**ネタバレ注意**
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 観ていて一番気になったのが、この映画がどれくらいアフリカをリアルに描いているのかということだ。鑑賞後に調べてみると、ケニアのスラム街できっちり撮影を行い、フェルナンド・メイレレス監督がドキュメンタリーかのようにリアルにこだわったことを知った。その姿勢は真摯で素晴らしいと思う。

しかし、鑑賞中に、リアルであるはずの映像に僕はやや疑問を感じてしまったのだ。僕らにはわからないが、アフリカの人々が見たら全然リアルではないと感じてしまうのではないか、という疑問だ。実際、かなりリアルを求めて撮影されたにもかかわらず、その疑問を感じたことに、僕はメイレレス監督の前作『シティ・オブ・ゴッド』に比べ、映像の持つ力が弱いのではないかと思った。ブラジル出身の監督がリオデジャネイロのスラム街を捉えた映像はリアルという面だけでなく、圧倒的な力を持っていた。その土地に対する理解度の差は少なからずあるだろう。やはり、ケニアよりもブラジルを捉えた映像の方が真に迫っていたように思えてならず、そこが残念だった。

 とは言うものの、そのケニアを映した映像も見事な美しさがあったのは間違いない。オープニング、テッサが殺害されたのちの現場を捉えたその映像は、血に滲むアフリカの大地、鳥が羽ばたくアフリカの空と、独特の色合いで映し出していて魅力的だった。

イギリスでの場面に比べ、ケニアという第三世界を映した場面の方が、映像に魅力があったのは、やはりメイレレス監督の弱者へ目を向ける視点が強いからだろう。『シティ・オブ・ゴッド』同様、貧困に目を背けずに描写する姿勢は、先進国出身の監督ではなかなかできないかもしれない。その点で、スリラーでありラブストーリーである本作も、メイレレス監督の作家性が表れていた。その部分は大いに評価されてしかるべきだと思う。

 やや新鮮味には欠けるテーマだとも思うし、もう少しジャスティンの内面まで深く描いて欲しかったと僕は思うが、スタッフもキャストも真摯に作品に向き合っているのが感じられる社会派スリラーの佳作である。

(評価:★3)

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