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[コメント] 涙そうそう(2006/日)

12話のTVドラマならば、これで良いのでしょう。ただ、映画はこれではダメなのです。(2006.09.30.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







序盤は思った以上の出来だった。沖縄を舞台に、美術にも力が入れられ、世界観を築いていたように感じた。そして、妻夫木聡長澤まさみともに非常に輝いている。主演の組み合わせに惹かれて観に行ったが、その点ではハズレではなかった。特に長澤まさみはこの手の役を演じさせたら、眩しすぎるほどで、胸を打ち抜かれてしまうほどだ。

だが、序盤はうまく流れを作ったものの、中盤以降は毎週続きを見てもらうための、チャンネルを変えられないためのテレビドラマ的な作りになってしまった。映画として僕が求めたものとはことごとく違う方向へ外れていった。

心理描写で泣かせるのではなく、ストーリー展開を動かすだけで感動させようとしている。観客が想像する部分がほとんどない。これで“涙そうそう”などど言われても困る。本当の涙をこれで流せるのか。上辺の涙しか、この映画は引き出せないのだ。

手紙で思いを述べて泣かせる。これは映像ではやるべきではないと思うのです。活字なら、作中の人物と同じ気持ちで手紙を読める。ただ、映像はそうも行かない。一枚の手紙がカメラに映し出されたとき、意外と多くの内容が読めてしまう。それをナレーションで読む。くどさを感じさせ、本来心で読むものを声で聞かせるものだから臭さも感じさせる。それを、兄、妹、両方で繰り返すとは、実にいただけない。

主人公を殺して泣かせる。これは本当に泣かせたいなら避けなければいけない展開ではないだろうか。人が死んで、悲しくない人などいない。一番泣きやすいシチュエーションであり、ゆえにドラマ的に見れば逆に安易である。仮に、主人公が死ぬならば、そこに必然性がなければならない。この物語は人が死んで悲しむのが主題なのだろうか。おそらく違う。兄妹の葛藤が主題である。それを切ってしまい、最愛の人がいないと悲しいでしょ、といった提示をされても冷めるだけである。

テレビドラマであれば、こういう展開が望まれるかもしれないが、映画の場合は、誰もチャンネルを変えたりしないのだから、じっくりと心を描いてほしいのだ。先の読めない展開が望みなら、アクション映画やサスペンスを観るのが良い。人間ドラマは先が読めないから面白いというタイプのものではないはずだ。

エンドロール中に珍しく席を立ったこの映画。最後に何かあったとは後から聞いた。だが、全然後悔の念は沸かない。

(評価:★2)

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