[コメント] パリ、ジュテーム(2006/仏=独=リヒテンシュタイン=スイス)
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★3でもいいかな、と思う佳作だが、僕がパリ好きなのでやっぱり★4にしてしまう。
街の魅力が溢れている短編オムニバスだ。さまざまな視点で場所の特徴を表現するのは、短編ならではの魅力だと思う。それは、小説でもそうだし、映画でもそう。その点、この映画は、それぞれの作り手ならではの視点で見つめたパリが描かれていて、非常に魅力的だった。
たとえば、クリストファー・ドイルが撮った「ショワジー門」という作品は、とにかく無茶苦茶な話だと思うのだが、それでもアジア圏で活躍するクリエイターならではの視点でのパリという点でユニーク。作品の良し悪しはともかく、どの作品もどこかで個性的なのだ。
僕が印象的だったのは、コーエン兄弟による「チュイルリー」と、ヴィンチェンゾ・ナタリによる「マドレーヌ界隈」の2本。
コーエン兄弟はスティーブ・ブシェミを使って、地下鉄のチュイルリー駅のみで撮影されたユーモラスな作品を作ってくれた。パリの地下鉄のホーム、これはなんだかとても魅力的なのです。その地下鉄のホームで、チュイルリーにあるルーブル美術館という大きな見所をあえて小さなスパイスとして使って、クスっと笑わせてくれた。
ヴィンチェンゾ・ナタリは、夜のマドレーヌの雰囲気を見せただけで、ナタリの作品だということを一瞬で感じさせたのがまず驚く。そして、ヴァンパイアの恋物語にしてしまったことにさらに驚く。ただ、マドレーヌ界隈はコンコルド広場やシャンゼリゼなどとも近く、華やかイメージがあるのだが、そこであえて、ノワールも似合ってしまうというダークなパリの側面から描いたのが新鮮だった。『CUBE』や『カンパンーマン』など、ダークなサスペンスを撮る監督らしさが現れていた。
他にも、個性溢れる作品が揃っていて、見終わったときには「パリ、ジュテーム」と感じられる作品だった。つい2ヶ月前にパリに行ったばかりだが、また行きたくなってしまう。観光地を見て回る以上の魅力がある街だから。
そして、こういう映画を観ると、ぜひ「東京、愛してる」という作品も観てみたい気がしてくる。
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