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[コメント] プレステージ(2006/米=英)

マジックの「タネ」と、映画の「オチ」。このふたつはそのものを楽しむ上で、さほど重要ではない。(2007.07.13.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







こういったタイプのサスペンス映画は、どうしても「オチ」に捉われてしまいがちだが、それによって鑑賞前から楽しみを削いでしまっている可能性がある。この『プレステージ』は、決してラストのどんでん返しのための映画ではない。クリストファー・ノーランが名を馳せた『メメント』も、実はどんでん返しのための映画ではないと思うのだ。

この映画は、決して描写が丁寧なわけではないが、人間模様を中心とした映画に思える。オチにしても、ふたりのマジシャンの苦悩を示すためのただのツールであり、明かされたマジックのタネが重要なわけではない。この映画のオチは中盤以降、意識的に観客に見せていたようにも思う。辻褄だけは合わせながら…。

完全に現実を超越したあのマシーンにより、マジックにとことんまで狂ってしまった男が堕ちるところまで堕ちた、ということがわかれば良い。半分ずつの人格で人生を欺くことにより、同じくマジックにとことんまで狂ってしまった男が多くのものを失った、ということがわかれば良い。

マジックによって自分すら捨ててしまったふたりの男…。これはひとつの哀れな人間の物語だ。

もちろん、完璧とまでは言えない出来である。『メメント』も記憶を失う哀れな男の物語だったが、その描写、脚本、どれをとっても非常に緻密だった。この『プレステージ』はそこまで至らない。

ただ、19世紀イギリスという作りこまれた世界観や、クリストファー・ノーランらしい巧みな編集、ヒュー・ジャックマンクリスチャン・ベールマイケル・ケインスカーレット・ヨハンソンという魅力的なキャストによって、2時間じっくりと楽しめる。

オチがありえないだろうというようなたった一瞬のことよりも、2時間楽しめることが、僕が映画を観る上では全然重要なのだ。

(評価:★4)

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