[コメント] シッコ(2007/米)
「アメリカの医療制度についてマイケル・ムーアが主張したいのはこれだ!」という視点が明確だからこその、ブレのない構成はさすが。残念なのは、ユーモアが際立たなかったことだ。(2007.09.01.)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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マイケル・ムーアの映画が公平性に欠けるということは百も承知だ。
『ロジャー&ミー』の対ゼネラル・モーターズ、『ボウリング・フォー・コロンバイン』の対チャールストン・ヘストン、『華氏911』の対ブッシュ政権、そしてこの『シッコ』の対医療制度。ムーアが「おかしい」と感じたことを攻撃することが明確な目的であり、その軸をぶらさず構成しているから、視点が偏るのは当然と言える。
その点を考えると、今回も2時間映画の構成としてはやはり的確だった。アメリカとその他の国の差異を強調し、最後は最終兵器としてキューバとの比較を持ってくる。しかも、911の救助にボランティアで参加した国民が医療問題で苦しむという皮肉を絡めて。「アメリカの医療制度の問題点を暴く」という視点では、それを突き詰めるためにかなり考え抜かれている。ムーアはもはや、ひとつの表現の形を完全に獲得したと言っても良いのかもしれない。
ただ、今回残念だったのは、重たい問題を扱うだけに今まで以上に「エンタテインメント」を意識して作っているはずなのに、その要素が薄れてしまったことだ。ムーアの映画の魅力は、楽しみながらも問題提起をしてくれることにあると思っていただけに、この『シッコ』では考えさせられる内容ではあったが、やや頭でっかちな印象も残ったのも事実だ。
そのあたりのバランスをすべて考慮すると、『ボウリング・フォー・コロンバイン』がやはりベストだろう。
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