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[コメント] ラスト、コーション(2007/米=中国=台湾=香港)

極限の思い…。過激なセックス描写をなしにしては描けなかった。憎しみ、哀しみ…複雑な感情が濃密に詰まっている。(2008.02.17.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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息を呑む駆け引きがある映画だ。スパイ映画としてと捉えても、恋愛映画として捉えても、すれすれのところを渡っていくような極限的な部分がある。非常に緊迫感があり、内容も濃密だ。

トニー・レオンタン・ウェイの過激なセックスシーンはスキャンダラスであるが、それ以上に、愛だけでなく憎しみや哀しみに満ちたゆえのあの激しさこそが、ふたりの間にある関係がいかに切迫したものであるかを感じさせくれる。いわば、強烈なインパクトを残すセックスシーンがなければ、彼らを描ききれなかったようにも思えるのだ。

タン・ウェイにしてみれば、抗日派のスパイとなったのは学生時代のワン・リーホンへの思いが発端。しかし、ことが進めば進むほど、彼との距離は離れるばかり。もちろん、スパイとして近づいたトニー・レオンに対して、愛情を持ったことは紛れもない事実だが、好きになるべくして好きになったわけではない。憎しみも持ちながら、哀しみも持ちながら、痛みとともに受け入れていった。彼女の中には複雑な思いが渦巻いていたはずだが、状況があまりに綱渡り的すぎた…。

ダイヤの指輪を手にしながら、搾り出すようにトニー・レオンに言った「逃げて」の一言。これは彼女がいかに切迫していたかを表していたように思える。

アン・リー監督の前作『ブロークバック・マウンテン』もそうなのだが、極限までいった上でのどうしようできないような感情が描かれている。そこで生まれる悲哀が、本作でもよく表れていた。

トニー・レオンは悪役としての様相が全編通して強かったが、ラストシーンで初めて感情を垣間見せる。ベッドに座ってひとり…。そこに残ったシーツのしわ。そこから感じる虚無感がとても印象的でした。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ジェリー[*]

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