[コメント] チェ 28歳の革命(2008/米=仏=スペイン)
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もちろんベネチオ・デル・トロが迫真の演技を見せていたことを前提として言うわけだが、彼がチェ・ゲバラに似ているかどうかはこの映画ではもはや関係がないのだ。
この前編を見た限りでは、スティーブン・ソダーバーグが選んだチェ・ゲバラへのアプローチ方法は、彼を英雄として見立てたり、思想を掲げるようなものではない。ドキュメンタリーのようなテイストで、ただただ事実を並べていく。
ただ、ソダーバーグはこの手のタッチで取らせたら巧い監督だ。それはデル・トロにアカデミー助演男優賞をもたらした『トラフィック』での演出が証明している。
ただ淡々とゲリラ戦の様子を描いているように見えつつ、時折挟み込まれる国連での演説シーンや記者からのインタビュー映像によって、チェ・ゲバラが何を語ってきたかに着目させる作りになっている。だから、ゲリラ戦を戦う山中でもゲバラが語る一言一言に注目させられるのだ。
チェ・ゲバラがなぜここまで崇められるかというと、それは彼の主張がぶれないということなのではないかとこの映画を観て感じた。一番根っこにある部分の信念は、絶対に曲がっていない。僕は死刑についてはあまり良い制度だとは感じていない。だが、ゲバラが処刑を行う理由には彼の主張が通っているし、「われわれは処刑を行った。それぐらい死闘だからだ」と演説で力強く述べるよう、彼はその行いを誰に咎められようと恥じていない。だから、その太い幹のようにしっかりとした信念には敬意を示さざるを得ないと感じた。「革命」というものの意味を誰よりも理解し、そこにつながるものであればなんだって受け入れる。自分を貫き通す姿は、やはりかっこいいものなのだ。
この映画は、そういったチェ・ゲバラの人間像をありのままに近い形で見せてくれたであろう。それが、これを鑑賞した後で感じられる一番の意味に思える。
また、ものすごく淡々とした映画で一見退屈なストーリー進行であるのだが、これだけゲリラ戦の感覚というものを映像で表現した映画は類を見ないのではないか。常に戦闘ばかりではないし、それ以外の忍耐を要する部分もこの映画ではきっちり描いていたように思える。「ゲリラ戦映画」という側面も評価されるべきであろう。
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