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[コメント] エレファントマン(1980/英=米)

実話の安易な映画化は多いが、実話であることがこれほど心に重くのしかかる映画は少ない。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 『イレイザーヘッド』の次にリンチが監督した映画だと思うと、前作よりも異様に真面目な映画を作ったように思う。前半では丁寧にドラマを展開させるためリンチらしいイメージがあまり見られないが、終盤に行くに従いジョンの悲しさが伝わってくるにつれ、リンチらしいイメージも登場してくる。このトゥルーストーリーは、仮にリンチ以外の人間が監督したら、凡庸なものになっていた可能性もある。それだけ、圧倒的なビジュアルイメージを作り出すリンチの世界観は、ドラマ展開重視のこの映画でも大きかった。リンチの世界観にジョンの悲しさが合致してるように思えた。

 とは言っても、人間描写も非常に長けているのだ。医者や婦長、女優はジョンに対し優しく接するが、それでも興味本位や偽善という視点を意識させるようになっている。ジョンを見世物にしようとする人々を簡単に悪いヤツと言って片付けられないというひっかかりが心に出来る。そこまで人間の本質を追求しているので、実話では良くあるパターンの安易な感動狙いや説教臭さとは全く縁がない。見ていると自然に「私は象じゃない、人間だ」という叫びに、健常者が寝るのと同じ体制で寝ようとするジョンの姿に、悲痛さを感じるのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)イライザー7[*] 太陽と戦慄 紅麗[*]

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