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[コメント] グラン・トリノ(2008/米)

映画として★5というよりは、クリント・イーストウッドの映画として★5なのだ。(2009.05.06.)
Keita

**ネタバレ注意**
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映画としての完成度の高さを考えると、近作『チェンジリング』の方が上手だと思うのだ。だが、僕は★4という採点をした。その理由は、監督であるクリント・イーストウッドという男の生き様が、映画の中になかったからだ。本当のイーストウッド作品とは、イーストウッド本人が主演していなければならない。

この『グラン・トリノ』という映画はあまりにパーソナルな映画だと思う。ゆえに、これをひとりよがりな映画だと批判する批評家や観客がいてもまったくおかしくない。しかし、もはやそれで良いのではないか。だからこそ、僕は★5という点数を惜しみなくつけようと思ったのだ。

退役軍人が孤独な老後を過ごし、心を支えてくれるのは愛犬と、ビールと、グラン・トリノだけ…。この設定を聞いただけですでにイーストウッドらしさに溢れている。もはや、その主人公を演じるイーストウッドの渋さが光るなどということは、述べる必要すらない次元に到達している。

僕が何よりこの映画でグッと来たとは、やはりイーストウッドが選択した、その“落とし前”なのだ。単身でギャングのもとへ乗り込んでいき、指で銃を撃つ真似だけをして、そのまま丸腰で撃ち殺されるという、落とし前。

許されざる者』では最後の決意を胸にし、復讐に向かった。『ミリオンダラー・ベイビー』では尊厳死という究極の落とし前を選んだ。そして今回、もう銃で撃つことはせず、新世代に託すために“死”という選択肢を選んだ。そうはなってほしくないが、これがもしイーストウッドの最後の作品となったら、これ以上のものはないのではないか、という気がしてならないのは、絶対に自分だけではないはずだ。

(評価:★5)

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