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[コメント] マイレージ、マイライフ(2009/米)

キャラクター描写がやっぱり丁寧で、柔らかいようで鋭い切り口がドキッとする。時代を描くことにこだわりすぎずにしっかり時代を描いている、すごく巧い映画。(2010.03.20.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画を、『JUNO』のような暖かい気持ちになる映画をイメージして観ていた。実際、中盤まではそういった方向性で動いていた。ユーモア溢れる台詞回しに、現代社会も見つめる柔らかくも鋭い切り口はジェイソン・ライトマン監督の得意技というべきものなのだろう。その中で、ジョージ・クルーニー演じる主人公は、孤独から人の暖かみを知る、という既定路線に行くと想像していた。むろん、その既定路線に行っても十分な出来の映画に思えた。だが、終盤でバットが出ない変化球を投げてきたので、非常に驚いた。

というのはベラ・ファーミガ演じるクルーニーの愛人が、独り身の男のパートナーになるべき女性かと思っていたら、彼女は夫も子供もいるということが発覚するのだ。しかも、彼女の家に思いを伝えようと押しかけて行ったその場で・・・。主人公がもっとも大きな決断をした瞬間、それを冷めた切り口で突き放してきた。たしかに、「割り切った関係」で始まっていたのだが、幸せな結末に向かっているように思えたのだ。「孤独」を意識させる役割としてアナ・ケンドリック演じるクルーニーの新米部下がいたことが効いていて、見事に錯覚させられました。

そして、映画はそのまま終焉に向かう。クルーニーが解雇を通達する人々は、しきりに「家族」という言葉を繰り返す。その都度、今まで主人公自ら否定してきた家族がいないという事実が、重くのしかかってくる。結局のところ、今まで生き甲斐にしていた1000万マイルを貯めて、光り輝くカードを手に入れたところで、彼の心には何も残らなかった。空港でひとり発着案内ボードを眺めるクルーニーの後ろ姿を見ていると、寂しい気持ちがじわじわと込み上げてきた。

この映画は、暖かみを与えてくれる映画ではなくて、寂しい人に暖かみの価値を気づかせる映画なのだと思う。観終わって、何とも言えない気分になりました。正直、心にぽっかり穴を開けられたような感じがしたのだ。独身男性にこういう心理描写はなかなか響くものがあります。

(評価:★4)

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