宮部みゆきの原作は未読だが、原作読んでなくても原作と比較以前の問題なのは一目瞭然。はっきり言って終わっている。上映終了後の観客の反応が全てを物語っています。山崎努が「黒澤明の『天国と地獄』を彷彿させる」と発言していたが、『天国と地獄』に失礼極まりない。『天国と地獄』の模倣すらもできていない。ただ、見たいけど見るかどうか迷ってる人には薦めます。こういう悪い例も知っておきましょう。(笑)

　前半を見ている限りでは、実はそこまで悪くないかもと思った。中居クンが主役なのに、初登場シーンまでは映画が始まってからかなり時間があり、アイドル映画ではないことを実証。姿を現さない犯人がデジタル技術を駆使し、マスメディアを完全に翻弄していく様を見ると、結構内容が深くなりそうだと感じさせられた。前半、主に登場する山崎努はさすがに演技派だ。ただ、弄くられた映像は少しあざとく、嫌気する。映像に関しては最初から最後まで馴染めなかった。

　中居クン演じるピースが初めて画面上に登場してから歯車が狂い始めた。中居クンの演技に関して言えば、そこまで悪くない。藤井隆に関しても、役柄が合っていたのもあっていた。だが、ヒロミを演じた津田寛治は台詞回しに少し違和感があった。個人的に嫌いなタイプの演技です。山崎努もそうだが、他にも役者の演技自体は軒並み悪くはない。だが、心理を追究する類のサスペンスであるのに、登場人物のキャラクターは表面的で希薄。原作に登場する役柄をなぞっただけといった様子。ストーリーも同様だ。山田花子や爆笑問題のサービス的なシーン挿入が話題ではあるが、 2時間の尺で作品として良質なものを目指すのであれば、それらは全く必要ない。

　そして、物語が終盤に進むほど、映画は最悪の方向へと歩んでいった。終盤は褒めることはひとつもない。脚本が余りに酷すぎた。訴えかけえるように語る山崎努の口から出る発言は説得力のかけらもない台詞、異様なまでに物事を記憶しているというご都合主義・・・etc。全てがどうでも良くなる。そして、ピースの爆破シーンでは唖然とするしか術がなかった。あんな見せ方をする必要があるのか？その後のピースの子供のエピソードにしても、"氏より育ち"というメッセージを伝えるに及ばない。あれでは何も伝わるはずがない。ラストシーンで、山崎努が赤ちゃんを抱きながら空を見上げるシーン。カメラが上がっていくに従い、自分の怒りのボルテージも上がって行った。

　赤ちゃんはピースと誰との子供なのか、鞠子は親に隠して何処に行くつもりだったのか、などと言った疑問が残るのだが、何度も見て謎を解明したいという気持ちは一切起こらない。むしろ、意味がわからないとかいうレベル以前に、深い意味はないだろう。意味がわからなくても、どうでも良いレベルの映画。おふざけ爆破シーンを笑い飛ばすような、所詮はギャグにしかならない、下手するとギャグにもならない程度の映画でしかない。