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[コメント] 機動戦士ΖガンダムIII 星の鼓動は愛(2006/日)

Zが時代を「切り開いた」のは間違いないのです。
新町 華終

ですが、その時代にはその時代の作品と言うのがあって、作品の端々にはその時代の風潮というのが必ずパッケージングされているものです。かつては「新人類(ニュータイプ)」などともてはやされた我々ベビーブーマー世代も、気が付けば腹の垂れてきた30代に突入し、夢もなく現実感もなく、格差社会と呼ばれる21世紀のうねりの中で、残り少ないパイを奪い合うのにも半ば疲れ果て、スーツに身を包みひたすらルーティンワークをこなす者、夢よもう一度!などとホコリをかぶった昔の楽器を再び手にするものなど、色々いるわけですが、かつての熱狂よりは現実感を、バブルよりは貯金を、と限界も感じつつ目の前にある日常のノルマを淡々とこなす毎日であるわけです。

そんな中で今更「Zガンダム」だの言われても、「何それ?新しいパチンコの機種?」などとボケた返答をするしかない悲しい自分。

かつて、富野監督のルーティンワークでしかなかったアニメ作品「Zガンダム」が、あの時代に先端と成り得たのは、作品そのものの力とは言い難いものがあったと、本作品を観賞するにつけ思わざるを得ないです。あの頃は今のようにゲームも少なく、CGもなく、携帯もなく、部活が終わってすぐに、毎週土曜日夕方にテレビの前にスタンバって、OPが流れ出すのをわくわくとして待ち、あれやこれやと妄想をめぐらせ、モビルスーツやキャラクターの絵を模写しながら、二段カゲやハイライト、MSの関節部などの細かなディテールに驚いたり、作画監督のテロップに目を凝らしたり、ドゴスギアのカタパルトが何枚かを数えたりして悦に入っていたものでしたが、しかしそれらはすべて画面上からではなく毎月出される雑誌などのメディアから得た情報によるものであり、それこそが、このどうしようもない結末の、グダグダなアニメ作品を珠玉の如く魅せる戦略であったことに気づくのはまだ相当先のことでありました。

しかし、その時代においては「Zガンダム」が新しい手法を「切り開いた」のは間違いなく、その後もメディアタイアップなどによって次々とヒット作品が生まれ、声優ブームやコミケなどの、一方で呼応した副次的な層の拡大にも繋がっていったわけです。

まぁでもこれだけ「残らなかったなぁ・・・」と思える作品も珍しいですよ。だってやっぱり20年前に観たものばっかりだし、リニアシートの背景が動いても20年後じゃ驚きにはならなかった。それにジュピトリスの脇っちょであっけなく死んでしまったシロッコに野心なんかあったっけ?って感じでしたし、キャラ的に貧粗な(?)レコアの恋愛感がどうしたからって、脱いでもいないならまったく興味ないですし(失礼)、元々「初代ガンダム」の上に描かれた話な割に、まったく意味も教訓も名セリフもない、絵空事の上に書いた絵空事といった感じでした。シロッコがもっと強大な敵であったなら緊張感もグッと増したのになぁ・・・。

(評価:★3)

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