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[コメント] スティング(1973/米)

だまされる喜び。
shaw

この映画を初めて鑑賞した時のことを、今でも結構覚えている。 まだ大学生だった私が暇つぶしに映画を借りてみるようになって、ちょうど自分にとって面白い映画が判別できるようになってきた頃のことだ。

確か、数週間前に「ハスラー」を鑑賞して、ポール・ニューマンのファンになった私は、レンタルビデオ屋で「ポール・ニューマン主演、アカデミー賞7部門受賞!」の宣伝文句に釣られて、どんな映画なのかもろくすっぽ知りもせずに借りて帰ったような気がする。

早速鑑賞してみて初めに思ったのが、「あぁ、この主題歌、電話の待ちうけでよく聴くなぁ」。そして、その主題歌とちょっと時代を感じさせるオープニングにすっかり油断させられたのだった。その後に待ち受ける驚きと興奮のラストなど、当然知る由もなく…。

その後の展開については語るだけ野暮なので割愛。 ただ、映画を観はじめた時は、ベッドで横になりながらリラックスしていたのが、途中で上体を起こして胡坐になり、最後は正座でTVと正面向いていたのを覚えている。一瞬の静寂の後のラストの一幕、本当に鳥肌が立ったし、完全にだまされていた自分に対して、してやられたという思いだったり、伏線の張られ方に対する驚嘆の念だったり、あまりに見事なカタルシスとか、いろいろと入り混じる感情に支配された自分がそこにはいた。

少し頭を冷やしたあと、すぐさま二度目の鑑賞を始めてみる。すると初回の鑑賞時には気付かなかった部分もいろいろ見えてくる。レッドフォードのどちらともとれる絶妙な演技と、それをすべて見通してますよといわんばかりのポール・ニューマンの貫禄。列車でのポーカーのシーンや、電話会社の重役の偽装とか、あまりの小気味良さに、いつの間にかニヤニヤしている自分を発見する。そしてあのラスト。今度はオチがわかっているのでハラハラする緊張感はないが、じっくりと練られた脚本の素晴らしさに改めて驚く。こ、これは本当にスゴイ映画だと。

「スティング」に出会う前にも、映画って面白いなぁ〜と思わせられることは何度もあった。でも、この映画を観たことがその後の映画好きとしての私を確立させたように思う。その後も数々の名作に出会ってきたわけだが、残念ながらこの映画を越える作品にはまだ出会えていない。当時受けた衝撃があまりにも大きかったのだろう。最近は、映画を観るということに慣れすぎてしまったせいか、滅多に驚くこともなくなってしまったのが自分でも寂しかったりする。

たまには、当時の新鮮な気持ちに戻って、あれこれ考えずに素直にだまされてみたいなぁ…などと、もう何度目の鑑賞になるかもわからない「スティング」のラストを観ながら思ったのだった。

「だまされる喜び」を味あわせてくれたこの作品には本当に感謝している。

(評価:★5)

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