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[コメント] 野獣死すべし(1980/日)

「異常」を「異常」として処理しないで、正面から切り取る。『ハンニバル』にご不満の方は是非。『ファイトクラブ』が好きな人も是非。 ♪色んな意味で責任は負いかねますよ♪

キレテル人、異常な人、というのは何故異常なのか知らないから「異常」なのだ。「この人はこういう風に考えて、こういう反応をして、こういう性格。」ということが、多くの人からある程度推測可能な人が、「普通の人」に当たる。そのたくさんの「普通の人達」側から見て理解不能な行動をとる人を「異常な人」と言う。

「怖い」というのは本質的に「知らない」ということだ。だから人は闇を恐れるそうだ。

映画では異常な人がどうして異常なのかは一々説明されない。『レオン』でゲイリー・オールドマンがなぜあんなにイライラしているか、説明不足だからつまらないなどと言う人はいないだろう。当たり前のようにそこに「異常」があるからこそ「異常」なのだ。だから怖い、(レオンでいうなら)面白い。

「異常」はその「異常である理由」を明かしてしまった時点で異常ではない。「戦場で正常でいられるほうがおかしい」って言葉なら誰でもうなづけるだろう。

本作は異常者を異常者として扱わず、真正面から捉えた。そういう意味の怖さはないし、そういう意味での面白さはない。だからこそ怖いとも言える。主旨が違うのだ。「通常は(異常)という記号でしか扱う事が出来ないものを主格として捉えた」、それが『野獣死すべし』だ。

確かに粗もある。そこまで全てを見せてしまうにしては、それに耐えられるだけの心理描写、説得力を備えているかというと、仔細に関しては少し普通すぎた気もする。あくまで娯楽映画だ。快楽殺人者の中身をさらけ出すというネタを使って最高に素敵な娯楽映画を作った、そんな感じ。

ハンニバル』にご不満の方は是非お試しを。逆に本作さらけ出し方や、古臭さにご不満の方は『ファイト・クラブ』を是非。ちなみにファイトクラブは快楽殺人者の話ではないよ。

とりあえず本作は、「悩める殺人者Aくんの、ちょっとかっこよくて、ちょっとかっこわるい大冒険」って事です。

(評価:★5)

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