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[コメント] レインマン(1988/米)

父親が遺したものはきっかけ。その贈り物を手に、家族を捨て去った男が、自ら手探りで「家族」をみつけていく心の旅の道筋を丁寧に辿るロードムービー。目的地ロスまでの距離が縮まるにつれて、もう一方の目的地までの距離も同様のゆっくりとしたスピードで、時には後戻りしつつ、徐々に縮まっていく。
ろびんますく

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







大事な誰か、特に家族に、自分の大事な気持ちが伝わらないことは歯がゆいことだ。でも、それは往々にして伝えることが難しいものでもある。

兄との出会いから別れまでの旅は、弟にとって「家族」を取り戻していく心の旅でもあった。スタート地点は、父が自分を理解してくれない、自分を愛してくれないという、父に対するコンプレックス。弟は、それゆえに家族から逃げ、それ以来、正面から向き合おうとはしないできた。

兄との関わりの中で、自分の気持ちが伝わらない歯がゆさや寂しさを知ったとき、弟は初めて、父の自分に対する気持ちに気付くことができたのだろう。父も自分が今、兄に感じているような気持ちを自分に対して持っていたのではないか?自分は、一度でも父の立場に立って考えたことがあったか?兄の気持ちを理解したいと感じるように、父に対して一度でもチャンスを与えたか?

そして、それに気付いた時に、弟にとっての家族を取り戻す旅はいったん終わりを迎えた。それは、ようやく見つけた家族との別れという形での終わりにはなった。しかし、彼は、やはり家族を取り戻すことができたのだ。兄だけではなく父をも。

家族とは、そこにあるものではなく、それぞれが作り上げていくものだ。弟が取り戻した家族が、どれだけしっかりしたものになるか、あるいは再び崩れてしまうのかも、全てはこれから。その意味では、兄弟の旅は、第一章の終わりを迎えたに過ぎない。旅は、飛行機を使うことなく、雨宿りをしたり、時には後戻りをしたりもしながら、ゆっくりと少しずつ前を目指し、これからも続いていく。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)映画っていいね[*] トシ ナム太郎[*] スパルタのキツネ[*]

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