モーツァルトがモーツァルトたり得たのは、才能だけでなく、それを支える夢、意志、そして決して失わない自信があったからである。自分を信じて道を切り開いていけば、サリエリもモーツァルトに負けない「可能性」がある、あるいは人間ジェロニモにも超人パワーが凄くて四角いサンシャインを倒せる「可能性」がある。

つまり黄金期の少年ジャンプで繰り返されてきたテーマなのだが、美しい映像の中で静かに静かにそれを伝えようとする点にこの映画の魅力があるのだろう。

殺人事件が全体のテーマから見て随分と陳腐に感じられる点や、ジェロームのキャラにもう一つ深みが欲しかった点等、色々あるのだが、最後の星空と炎はそれらを忘れるほどに力強い美しさがある。

『アマデウス』に対するアンチテーゼともとれるが、というよりは、同映画で必ずしも言い尽くされていない部分を補完していると言った方が良いかもしれない。